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激闘・幻怪衆

 スボウジュが発動した波動炉は、秘密裏に暗黒波動仕様に改造されていた。

 炉の崩壊が始まり炎と悲鳴に包まれる中、幻怪衆は首謀者エボノを追い詰める。しかし援軍として暗黒帝国のオニの軍団がやってきた。率いるのは帝国の参謀ヌラリヒョン閣下。

 摂政エボノさえ「用済み」と、一瞬で焼き殺したヌラリヒョンたちは、勢いを止めぬまま幻怪衆に襲い掛かった。


 「何人たりとも、我らの邪魔はさせぬ」

 ヌラリヒョンの号令でオニたちが飛び上がった。呼応して芥子菜からしな組も飛び上がり、空中で激しくぶつかりあう両者。

 島二郎が叫んだ。

 「足止めを喰らってるわけにはいかないんだ」

 神殿の炉から噴き上がる炎はどんどん大きくなる。時折爆発音、そして熱気を帯びた爆風が吹きすさぶ。

 「早く炉を、何とかしないと…」

 あちこちに出来た地割れから沸騰した水蒸気が噴き上がる。どんどん温度が上がる中、血と汗の飛沫が飛び散る。

 

 「な、なんて力だっ」

 八尺を超えるオニの巨体が繰り出す攻撃に、鍛え抜かれた芥子菜組でさえも防戦一方。

 「帝国め、いつのまにこんなたくさんのオニを」

 一匹でも手に負えないオニがこれほど束になって攻めてくるとは。


 油断が命取りになる。

 「う、うああっ」

 「立てっ、逃げろっ」

 島の叫びが虚しくこだまする。芥子菜組の一人、宗三郎がオニの金棒に突かれぐったりと倒れこんだ。

 「やめろ、やめろおっ」

 痙攣しながら身動きの出来ない宗三郎に覆いかぶさるようにしてオニは、躊躇なくもう一撃、頭上高くから金棒を脳天めがけて振り下ろした。

 「そ、宗三郎おっ」

 粉々に轢き潰れた頭を踏みつけながらオニはさらに迫ってくる。

 「許せん、許せんっ」

 島二郎が走る。オニの懐を通り抜けながら抜きざまの刀がうっすら光を帯びると、オニは真っ二つに切り裂かれて地に這った。

 全身の血管を浮き立たせて島二郎が雄叫びを上げた。

 「てめえら全員ぶった斬ってやる」


 「さあこっちもいくぞ」

 夫羅ふらも飛び出した。


挿絵(By みてみん)


 鋼弦はがねいとを投げつけオニの首に巻き付かせる。

 「ぬうっ」

 慌てて振りほどこうともがくオニ。しかしすでに夫羅はその頭上へ。

 「ぐ、ぐふあっ」

 後頭部から首筋に、深々と匕首が突き刺さりその命に終止符を打つ。


 「し、しかし…」

 多勢に無勢か。

戦線はどんどん後退する。多少の傷ではびくともしない強靭な体力を武器にオニの軍団は幻怪衆を圧倒しはじめた。

 「ぐああっ」

 また一人、芥子菜組の一員が犠牲になった。唸りを上げる金棒をいつまでも逃げ切れるものではない。

 「新介っ」

 叫ぶ島二郎、その耳には弟子が骨までバラバラに砕かれる音が残響のように残る。

 「おのれ…覚悟しやがれ。もうこれはいくさだ」

 手持ちの炸裂弾を次々に投げる。直撃を食らったオニは文字通り、八つ裂きになって吹き飛ぶ。

 「まだ足りんっ」

 手当たり次第オニに斬りかかる島二郎。握り締めた刀の切っ先が描く鋭い直線に、花開くような血飛沫が彩りを添える。

 「一体何匹いるんだ、どこから湧いてくるんだ、このオニたち」

 それでも湧き出るように襲い来るオニたち。

 「うっ」

 二匹のオニに挟まれた。振り返って背後のオニを切り倒しているうちに前方の間合いを詰められた。

 「くそっ」

 目の前には巨大な金棒。

 「しまった」

 振り下ろされる唸り音に耳がざわつく。つづいてキーンと甲高い破裂音。

 「うっ」

 火花が散った。

 雪の結晶のように金属粉をキラキラと散らして、島二郎の眼前でオニの金棒は眩しい光の中に砕けた。その衝撃でオニも吹き飛んだ。


 「島、てこずっとるな」

 「遅いじゃないっすか、師匠っ」

 島二郎の窮地を、幻翁げんのおきなが波動弾で救った。

 「たいした数のオニじゃな…ん、こっちもかっ」

 夫羅が三匹のオニに囲まれている。

 「ひっ、ひいいっ。やばい、やばいっ」

 「手の焼ける弟子じゃのう」

 あっという間に駆け込んだ幻翁が一匹、二匹と素早い蹴りで畳み込む。

 「翁っ。助かったあ」

 もう一匹は落ち着きを取り戻した夫羅が匕首で仕留めた。

 「オニとはこんなに手強いものか…」

 「当り前じゃ。オニの一匹は人間の一個小隊に相当する。こんなのが続々現世に攻めて来たら太刀打ち出来ん」

 「た、確かに…」

 「だからわしはお前たちを厳しく鍛えておるのじゃよ、ふふふ」


 「ジジイ、おしゃべりもその辺しておこうか」

 低い嗄れ声。

 「お前は…」

 幻翁の背後に、音も無く近寄っていたのはヌラリヒョン。

 いち早く気づいて攻撃を仕掛けた島二郎と夫羅。

 「てめえっ」

 「雑魚が」

 ヌラリヒョンがフワッとローブを翻しただけで強烈な暗黒波動のオーラが放たれ、二人は触れることもできないままに吹き飛ばされた。

 「お遊びはここまでだ」

 顎鬚をさすりながらヌラリヒョンが呟いた。幻翁が首を横に振る。

 「いやいや、これからだよ。お遊びは」

 目を合わせてニヤッと笑う。

 「お先に」

 「なら遠慮なく」

 ヌラリヒョンが前に突き出した両手から大きな暗黒波動が飛び出す。同時に幻翁も光の波動弾で応戦。

 「ううっ」

 両者の波動のぶつかり合いは周囲にズシンと腹に響く衝撃を撒き散らしながら激しい火花を上げて相殺した。

 「さあ、本気出そうじゃないの」

 「お互い、な」

 腰をぐっと下げて身構えた幻翁はヌラリヒョンを見据えたまま、弟子たちに向かって声を上げた。

 「ここは俺が。お前たちはオニを頼む」

 

 つづく

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