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まえがき

 「小説幻怪伝」では、異次元世界「幻界」の生き残りと「冥界」の野望が世界を巻き込む様を描きました。

 それは、妖怪たちや人間、幻怪たちが生き生きと戦う物語。


 そして現世には彼らだけではなく数限りない命が日々を過ごしています。

 今回の「外伝」は、幻界と冥界の争いに翻弄された者たちのもう一つの物語。


挿絵(By みてみん)


 主人公は河童。

 ええ、日本人なら誰でも知っている水棲妖怪です。

 日本全国には河童にまつわる伝承が今も息づいていますが、幻怪ワールドにおいては一体どんな位置づけ、どんなストーリーを秘めているのでしょうか。

 「小説幻怪伝」にも河童族が登場していました。幻怪戦士の心強い仲間のすすや、残虐な手段を用いる闇の勢力の手先「黒河童派」です。


 さあ。

 ここで時計の針を嘉永六年、あの富士の決戦からさらに三十年ほど戻しましょう。

 時は文政年間。

 一見すれば現世は町人文化華やかな太平の様相。まだ来るべき暗黒の魔の手に人々が気付いている様子はありません。

 けれども、文字通り水面下では現世の覇権を巡る妖しげな権謀術数が繰り広げられていたようです。


 あなたも早速、水ぬるむ河童の国へ旅立ちましょう。人間の想像を超える世界がそこに広がっているはずです。


挿絵(By みてみん)


 ええ、心配は要りません。

 案内役は「幻怪伝」でお馴染み、札売りの夫羅ふらさんが仰せつかります。

 この頃はまだ、若き波動術使い見習い戦士として幻翁げんのおきなに使える身ですが

 しっかりとあなた方を地下水脈に連なる未知の王国へお連れしてくれることでしょう。


 さあ準備はいいですか?

 人間のあなた方はしっかりと空気樽を背負って竹筒のパイプを咥えてくださいね。

 水中は足元も悪いですし、あまりはしゃぐと空気が早く減ってしまうのでお気をつけて。


 それではしばし、河童の国へと出かけてみようじゃありませんか。


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