第7話「除外危機2年目」
前回までのあらすじ―――――
0勝で迎えたリーグ最終戦。
リーグ除外条件が「年間0勝」に変更となっていたので、この試合には負けられない状況になった。
相手は6位以下になったことが無い翠清大学。
試合は我妻が翠清打線を封じきり、味方の1点によって勝利。
リーグ除外は免れた。
―――――――――――
9月。
銘央大野球部は夏期リーグが終わると、練習の日々に戻る。
ちなみに、スーパーコメットリーグが終わると4年は引退となる。
「おりゃあ!」
俺の投球は、どんどん改善されていく。
ストレートは最速で152キロを出せるようになり、変化球では高速スライダーを覚えた。
それに合わせようと、チームメイトも成長した。
特に、野手陣は守備と打撃が、投手陣は制球と変化球が上手くなった。
「こんな急に上手くなるのか……?」
あまりの急成長に戸惑う監督。
それに対して、マネージャーはこう話した。
「我妻くんのレベルに合わせようとしているんだと思うよ、多分」
「レベルに合わせようとしている、か……。そのうち、最下位という定位置を抜けられそうだな」
監督はチームの最下位脱出に、期待を寄せる。
翌年の3月1日、努誠大野球グラウンド――――――。
スーパーコメット春期リーグ、開幕。
夏期との間で、チームは大きく成長した。
開幕戦の相手は、1年ごとに上位と下位を往復しているという努誠大学。
エースである3年の清川は、「サターンカーブ」と呼ばれる独特の変化のドロップカーブが武器。
試合が始まると、やはり投手戦となった。
「はああ!」
「ふんッ!」
7回までで、俺も清川も無失点。
試合が動いたのは8回、銘央大の攻撃だった。
1アウト1・3塁の状況。
ここでバッターは5番、小平。
清川の第1球は―――――
142キロのストレートだった。
勢いよく迫るボール。
小平がバットを振る。すると―――――
「カーン」という音を挙げ、ボールはバウンドしてショートの前にコロコロと転がる。
ショートは1塁にボールを送球。
その間に3塁にいたランナーの葛田がホームイン。
これで、銘央大が先制。0-1となる。
その裏の我妻はバッター3人のうち2人を打ち取り、1人を三振に抑えた。
9回に追加点とはならなかったが、我妻が抑える。 そして―――――
「オラアアアアア!」
雄叫びと共に投げた、ボール球と見せ掛けて急に落ちる125キロのフォーク。
(これはボ……いや、ストライクか?)
バットは空を切り、ボールはキャッチャーミットに入る。
その際、「ズバン」という音が響く。
「ストライク、バッターアウト!」
審判の掛け声と共に、試合は終わる。
0-1で、銘央大の勝利となった。
良いスタートダッシュを挙げた銘央大。
しかし、リーグはまだ開幕したばかりだ。
・続く