第4話「大袈裟に言おうがお前らがエラーしても何とも思わん」
前回までのあらすじ―――――
6月に入り、練習をしていた我妻は監督に呼び出されて練習を一旦中断する。
監督から伝えられた言葉。 それは、「銘央大学がスーパーコメットリーグから除外される可能性がある」という通告だった。
この事を言い伝えられた部員達は、7月の夏期リーグ開幕まで必死に練習していた。
そうして7月を迎え、スーパーコメット夏期リーグが開幕した。
その開幕戦の相手は総合優勝4回の強豪、大曜大学。
いざ試合会場に訪れるやいなや、大曜大の部員に挑発されてしまう。
それに乗った我妻は激怒。
部のマネージャーがなんとか止めるも、我妻の態度は悪くなる。
そんないざこざもあったが、先発出場となった我妻は自分の大学生としての初の試合に臨む。
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今日の大曜大学は先発は、3年にしてエースの金井。
試合前に挑発してきたのもこの金井だ。
しかし、その実力は侮れない。
その体格から感じ取れる威圧感、大学生にして遠投117mの強肩から放たれる最速148キロのストレート、鋭く曲がってキレも抜群の縦スライダーとカーブ。
そんな投手相手に歯が立つ筈も無く、1回の銘央大学の攻撃は3人とも三振で終了した。
そして1回裏、大曜大の攻撃。
銘央大の先発投手は―――――俺だ。
俺には強力な球が二つある。
一つは、最速151キロのストレート。
もう一つは、凄まじく落ちるフォーク。
バットは空を切り、「ズバーン」とキャッチャーミットにボールが入る音が響く。
「ストライーク! バッターアウト!」
俺も、この回は3者連続三振で抑えてみせた。
2回表、銘央大の攻撃。ここで異常事態が起きる。
金井の「投球ミス」による死球で、5番の黒島が出塁。
そこから、金井が狂い始める。
(さっさと一塁行け、クソが!)
なんと、真ん中へのストレートしか投げない様になってしまったのだ。
それでも、銘央大の打線では全く打てない。
スイングのタイミングも、バットの高さも合っていなかった。
結局、この回もヒットは無し。
デッドボールで出塁した事以外は、ほとんど1回と変わらない。
そして、2回裏の大曜大の攻撃。
ここでまたもや異常が起きる。
バッターは4年生の4番、青崎。
昨シーズンの打点王だという。
(まずは……コイツだ!)
捕手のサインはストレート。
それに合わせ、俺も左側にストレートを投げる。 だが――――――
青崎には、既に読まれていた。
青崎の打球は高く上がり、左翼96mのフェンスの上を超えてレフトスタンドの後方に落ちる。
ホームランだ。
青崎は無表情でベースを一周。
これで大曜大が先制。
「そんなに甘くない、という事か……」
俺は青崎がベースを一周した後にそう呟いた。
大学野球初失点は、ソロホームランという最悪の形となった。
早くも先制された銘央大。
試合はまだ序盤なのだが、相手はリーグの強豪。
どこまで抵抗できるのか――――――