第3話「それはお前らが弱すぎてお話にならないチームだからだ」
前回までのあらすじ―――――。
スポーツ推薦に合格し、銘央大学野球部に入部した我妻。
自己紹介を済ませた後に始まった練習はあまりにレベルが低く、余計な一言を言って胸ぐらを掴まれそうになる。
それでも我妻は、自分の実力が本物である事を練習で証明して見せたのだった。
――――――――――――
入部から2ヶ月。
黒に水色と青の大学ロゴが縫われたデザインの帽子にも馴染み始める。
そんな俺は野球場のブルペンでコントロールを良くしようと練習していたが、突然中断するように言われる。
「お前らに言いたい事がある。 それは……」
「次にスーパーコメットリーグで最下位になると、リーグから除外される可能性が出てきたんだ」
これが、監督から部員に言い渡された事だった。
「おいおいマジかよ……。代わりとかどうするんだよ?」
スーパーコメットリーグ――――――
銘央大学以外にも、9校が加盟している大学野球リーグ。
10年前に始まったリーグなのだが、銘央大は10年連続で最下位。
その上、2年前に會嚶大学に2-1で勝利してから一度も勝利がない。
3月開幕の春期リーグと7月開幕の夏期リーグがあり、合計で36戦(春期、夏期共に18戦)を戦う。
春期と夏期の成績を合わせて、最も勝ちが多かった大学がリーグ総合優勝となる。
総合優勝すれば、9月に教殿球場で行われる秋期大会への出場権を得る。
「夏期リーグ開幕は7月だ、それに向けて本気で練習するように!」
「はい!」
監督の呼び掛けに対して我妻以外の部員達は大きな声で返事をし、練習は再開される。
そして、1ヶ月後―――――
大曜大学第一野球場。
ここで、スーパーコメットリーグの夏期開幕戦を迎える。
相手はリーグ総合優勝回数4回の強豪、大曜大学。
「よお、最弱チ・イ・ム・さ・ん?」
相当舐められているようだ。
「なんだと……!」
この挑発に対し、俺は怒りの感情を全面に押し出す。
「ちょっと、我妻くん!」
1年のマネージャーが、我妻を止めにかかる。
その時、マネージャーは我妻の右手を自らの左手で握っていた。
「や、やめろ! 俺の右手を触るな!」
「えっ? ごっ、ごめん……」
「……最悪だ」
俺は小声でそう呟いた。
「さっさとやろうぜ、ノロノロしてないでよぉ?」
相手チームのキャプテンらしき人物が、こちらの事をからかってくる。
「……ああ」
俺は、黙々と一塁側のベンチへ向かった。
「今日のスターティングメンバーを発表する!」
監督がそう言ってオーダーの書かれた紙を、ベンチのホワイトボードに磁石でくっつける。
その紙には、「9 我妻 投」と書かれていた。
俺は先発での出場となった。
その後ベンチから出て、3mはあるマウンドとホームベースの間に立つ。
「これより、大曜大学と銘央大学の試合を始める!」
審判がそう言った後、両チームの選手は目の前の相手に一礼をする。
この試合では銘央大が先攻となっているので、とりあえず一塁側のベンチへ。
一塁側のスタンドには3人程度しかいないのに対し、三塁側のスタンドには100人ほどの大曜大の生徒と思われる集団と2、3人のスカウトらしき人物がいる。
何れも、ガラガラなのに変わりは無いが。
相手チームのメンバーが守備位置に付き、試合は始まる。