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アイロンピッチ 大学野球編  作者: 仲間共成
1/12

プロローグ

 今年も皇凰(こうおう)球場で行われた、夏の高校野球全国大会決勝戦。


 その組み合わせは、46年ぶり2回目の出場となった幸鳥(こうとり)代表、蜻蛉学院(とんぼがくいん)大学第三高校と、3年連続19回目の出場となった迷羊(めいよう)代表、共社(きょうしゃ)第一高校。


 試合は9回裏、共社第一高校の攻撃。3-0で、蜻蛉学院大三高がリードしている。


 フォアボール等もあり、2アウト満塁。


 本塁打(ホームラン)を打たれるとサヨナラ負けとなる気を抜けない状況で、バッターは4番、盾野(たての)


 プレッシャーからか、制球が定まらない。


 そして2ストライク3ボール、フルカウントとなった。


 蜻蛉学大三のエース、我妻(あづま)の第6球目。


 「おらああああああ!!」


 我妻が大きな声と共に投げた球は、右の外角高めに。


 (これは……ボールだ!)


 ボール球かと思いきや、バッターの少し前に来たところでガクンと下に落ち、キャッチャーミットへ。


 (ま、まさか!?)


 盾野はバットを大きく振るも、大きな変化のフォークボールには(かす)りもせず。


 キャッチャーミットには、ズバーン、という音を立ててボールが入る。


 「ストライイイク!バッターアウト、ゲームセット!」


 審判の判定はストライク。


 この瞬間、蜻蛉学院大学第三高校の全国制覇が決まった。


 スタンドからは、大きな歓声が響いてくる。


 我妻以外の蜻蛉学院大付の選手達が、マウンドに駆け込む。


 駆け込んできた選手達は、自分の右手を高く上げ、人差し指を空に向かって立てた。


 その後、校歌斉唱や閉会式が行われた。


 そして――――――


 10月、我妻は蜻蛉学院大三高の校舎にいた。


 「あの、我妻さん?」


 声を掛けてきたのは、野球部のマネージャーの夏谷(なつたに)


 「なんだ、夏谷?」


 「今日でプロ志望届の提出が締め切りになるんですが、我妻さんは提出しましたか?」


 志望届について聞いてきた。


 「出すつもりは無いな」


 我妻はすぐにこう言葉を返す。


 「えっ……?」


 困惑する夏谷。


 「大学4年になったら、考えようと思っている」


 「また4年後、という事ですか?」


 「そうだ。自分の能力を考えると、高卒では早すぎると思ってな」


 我妻は、あえて大卒としてのプロデビューを目指そうという。


 「は、はあ……。ところで、大学に向けての勉強は……」


 夏谷が話を変え、学業について聞いてくる。


 「既にやっている。スポーツ推薦という考えもあるがな」


 そう言って我妻は、夏谷から離れる様に廊下を歩く。

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