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第四話 チナツ

 試練の迷宮の地下二階でチナツさんと俺はダンジョン・アントと戦った。神授の剣とダンジョン・アントの数が少なかったおかげで怪我はないが、正直に言って怖ろしかった。こんな生活に慣れるんだろうか?

 階段から続く通路を十メートルほど歩くと一階のエントランスのような部屋に出た。四方の壁に通路がある。天井には相変わらず原理不明な照明が周囲を照らしている。魔法の蛍光灯だろうか? 通路の左右には一階のように扉がある。


「とりあえずまっすぐ行きましょうか」


「それが良いわね。最悪亜人が出てもまっすぐ逃げれば階段だし」


「出来れば逃げずに済ませたいですけどね」


「蟻が何とかなれば大丈夫よ」


 経験者のチナツさんが言うのだから間違いは無いだろうが、俺は正直不安で仕方が無い。俺も場数を踏めば怖いとは思わなくなるのだろうか。


「だと良いんですが」


「そんなに心配しなくても大丈夫よ。地下二階は蟻に齧られて痛い思いをするかもしれないけど、死ぬようなことは無いから」


 よく考えてみれば素人であろうチナツさんが無事に三階に降りられるようになっている。よほど下手な事をしない限り地下二階で死ぬような事はないはずだ。

 チナツさんが最初の扉を蹴り開けた。部屋の中にはラージ・スライムが四匹いる。四匹とも俺達を認識したのだろう。こちらにゆっくりと移動し始める。ラージ・スライムの動きはダンジョン・アントよりも確実に遅い。これなら何とかなるだろう。


「一人二匹ね」


「解りました」


 俺は走りよってラージ・スライムに斬りかかる。チナツさんは軽戦棍をサブウェポンの短剣に交換してラージ・スライムに攻撃している。スライムと戦うには打撃武器より刃物の方が便利そうだ。

 ラージ・スライムが蒸発すると半銀貨四枚が残る。


「次の部屋行こうか」


「はい」


 俺はちょっとだけ帰ろうかなとも思ったがまだ早いだろう。


「こんどは君がドアを開けてみて」


「はい」


 俺がドアを蹴り開けると部屋の中にはラージ・スライムが三匹いる。


「行きます」


「がんばってきてね」


 俺はスライム達を神授の剣で両断する。こいつらの神経系や循環器系はどうなっているのだろう? まあ、蒸発して消えるような擬似生物の神経系を考えても意味がないか。

 三匹のラージ・スライム蒸発して銅貨が三枚残る。


「ちょっと早いですけど帰りましょうか。黒猫亭のメイドさん達が用事があったみたいだし」


「もうちょっと頑張りましょう。剣を使ってるといろいろ物入りよ」


「物入りって?」


「剣を洗う水代とお手入れ用の油が銀貨一枚。毎日もぐると馬鹿にならないわよ」


 一年間毎日もぐると銀貨三百六十五枚なので、銀貨六十枚で金貨一枚の交換レートだから金貨六枚と銀貨五枚か。やっぱり剣は維持費がかかる。塵も積もれば山になるというのはこのことだ。俺の剣は通常の剣より威力が高いようだからまだマシだが、かっこいいからという理由でボッタルク商店で剣を買った奴は涙目だろうな。神様もどうせなら気を利かせて剣じゃなくて打撃武器にしてくれれば良かったのに。


「じゃ次の部屋行くわよ」


「はい」


 次の部屋に行くと言うわりにチナツさんが動かないので、俺が部屋の扉を蹴りあける。そういえば中に何が居るかわからないから、女性を先に入らせて安全を確認させるのがレディファーストの起源らしい。ひどい話だよな。


「げっ」


 部屋の中には巨大蟻が四匹いた。俺としてはラージ・スライムの方が面倒が無くて良かったのだがそうも言ってられない。

 俺が一番左側の奴の左側に回って巨大蟻の頭部を切り落とす。

 チナツさんは右側の巨大蟻の頭をメイスで叩き潰す。

俺が二匹目の蟻を頭部の付け根への一撃でトドメをさす。

 巨大蟻が蒸発し銅貨四枚を回収する。蟻にはレアドロップとか無いんだろうか?


「次行きますか」


「ええ」


 俺が部屋の扉を蹴りあけるとラージ・スライムが四匹いた。こいつらは正直楽勝である。


「イズモくん、ちょっと部屋を出ててもらえる」

「出なくても大丈夫ですよ。スキル使用」


 チナツさんがきょろきょろしてるのでスキルを使ってみる。空中に数センチほど浮いたドアが出現する。


「ドア?」


「どうぞ」


 ドアを開けると洋式トイレがある。


「それでも部屋から出て行くべきよ。特殊な趣味が無い限り」


「解りました」


 俺にはそーゆー特殊な趣味は無いから部屋から出て行く。


「じゃ。失礼して」


 部屋の中からドアが閉まる音がした。しばらくしてからチナツさんが部屋から出てきた。


「お待たせ」


「いえいえ。すいませんがちょっと待ってて下さい」


「仕方ないわね」


 トイレは一つしかないので男女共用なのは仕方が無い。俺はすぐに用事を済ませてトイレから出た。


「そろそろ戻る?」


「もう一部屋だけ行きましょう」


「りょーかい」


「じゃ開けますよ」


「うん」


 二つ奥の扉を蹴り開けるとラージ・スライムが四匹いる。

 俺達は特に苦労せずにラージ・スライムを倒すと銅貨を回収し本日の収穫を等分し、チナツさんにいろいろ「お礼」をしてもらってから黒猫亭に戻った。

 チナツさんは前のご主人様にいろいろ調教されていたらしい。

 お疲れ様でした。


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