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第三話 地下二階で巨大蟻と戦う。

 俺は迷宮の黒猫亭で冒険者として覚えておくべき事についてチュートリアルを受けた。


「ところで二階のモンスターは何がどのぐらいでるんですか?」


「私達には解りかねます」


 メイドさん達は迷宮に潜っていないから解らないのだろう。仕方ないので隣のテーブルの女性冒険者に訊いてみる。


「すいません」


「何か御用?」


「お尋ねしたいんですが地下二階にはどんなモンスターが出るんでしょう?」


「ジャイアントアントとスライムかな。そんなに手ごわいことは無いよ」


「ホントですか?」


「嘘はつかないって。今から行ってみる?」


「いいんですか?」


「いいわよ。私もこれからいくつもりだったし」


「解りました。んじゃ行ってきます」


 俺は食事の代金として銀貨一枚を財布から取り出す。


「昼食も朝食と一緒で銀貨二枚でいいのかな?」


「はい」


 アオイさんが愛想よく答える。アイちゃんは他のお客さんに接客中だ。


「じゃいきましょうか。私の名前はチナツよ」


「俺はイズモです。よろしくお願いします」


「こちらこそ」


 チナツさんは愛想よく答えてくれた。


「薬は持ってる?」


「回復薬を三つ持ってます」


「三つあれば何とかなるか。じゃ行きましょうか」


「はい」


 俺とチナツさんは速攻で同行を決めた。メイド長とメイドさん達が何か言いたいようだが当面は放置する。


「いってきます」


「いってらっしゃいませ」


 メイドさん達の声がちょっと冷たい気がするが気にしない。

 俺達は早足で迷宮の入り口に向かう。


「一階、二階は戦闘の練習みたいなもんだからそう緊張しなくても大丈夫よ」


「三階以降は厳しいんですよね?」


「オークとか亜人が出てくるしね」


「魔法は使えないんですか?」


「レベルがアップした時に新しいスキルを取れるから、その時に好きな魔法を取ればいいわ」


「ありがとうございます」


 長期間修行しないと魔法は使えないわけではないらしい。俺は前衛の戦士系でいくつもりだけど。


「ところで男性が少ないみたいですが?」


「そりゃ早起きな連中はもう迷宮に入ってるし、今日は休みの奴とか昼まで寝てる奴はまだ寝てる頃

だからね」


「チナツさんは寝坊でもしたんですか?」


「そんなとこかな」


 彼女にも何か事情があるのだろうが、俺も追求するほど馬鹿ではない。

 地上のログハウスから階段を下りて地下一階のエントランスで装備を確認する。

 俺はメインウェポンの神授の剣と革鎧に楯に回復薬が三つ。

 チナツさんは軽戦棍に革鎧に首輪のようなネックガードと篭手、楯と案外重装備だ。


「ヒュージ・スライムはお願いね。アレは打撃武器が効きにくいから」


「解りました」


 そうこうしている内にスライムが一匹寄ってきた。とりあえず試し切りしてみるが神授の剣一号のようにサクッと斬れる。神授の剣二号も十分強力な武器だ。


「それが神様からもらった剣?」


 チナツさんも神授の剣の事を知っているらしい。情報の伝達速度は結構早いようだ。掲示板とかあるのかね?


「最初にもらった剣は手違いだったそうで、別の剣に交換したんですよ」


「ふーん。神様なのに慌て者なのね」


「みたいですね」


 スライムが蒸発して銅貨一枚をゲットする。この銅貨は迷宮の黒猫亭での支払い専用らしい。

 通路脇の部屋を無視してボスルームに入る。ヒュージ・スライムがのっそりと俺達の方に移動し始める。どいやって他者を知覚しているのか不思議だか熱かなんかを知覚する器官があるのかもしれない。

 俺は力任せにヒュージ・スライムを斬る。ヒュージ・スライムは避けるだけの知性も力もないハズだ。耐久力だけは十二分にあるようだが。それでも三撃目にヒュージ・スライムが動きを止めて蒸発し、銀貨一枚が残る。


「じゃ降りましょうか」


「はい」


 俺は大銀貨を拾って階段を下りる。拾った金は最後に山分けすればいいか。

 地下一階が剣を振るった事も無い超初心者向けならば地下二階は初心者向けでそう危険な敵が出てくる事は頻繁には無いだろう。実質的な戦闘訓練は地下三階と思われる。

 地下二階に降りた地点で腹を減らしているらしいジャイアント・アントが出迎えてくれる。全長は一メートル強ぐらいだから一階に出る働き蟻ではなく兵隊蟻らしい。

 目の前にいるジャイアント・アントは二匹。数が対等ならさほど恐れることは無いだろう、多分。


「油断しないで。噛まれたら痛いじゃすまないわよ」


「はい」


 つまり噛まれないように頭をつぶせばいい訳だな。

 俺は剣を大上段に構え、足に齧りつこうとする巨大蟻の頭を叩き斬る。

 チナツさんは軽戦棍で巨大蟻の頭部を潰したらしい。蟻の死体が蒸発して銅貨四枚が残った。スライムみたいにほとんど危険がないならばともかく、齧りつかれる危険があって食事一回分以下では割りに合わない気がしないでもない。


「蟻は大振りしないほうがいいわよ。案外素早いから」


「次からそうします」


「お金が儲かり始めるのは地下三階に下りてからよ。ヒュージ・スライムは復活するまで一時間以上かかるし」


 金儲けが大変なのはどこでも同じか。

 二階の通路を歩いていると新手のジャイアント・アントが三匹現れた。

 俺は正直緊張するがここは神授の剣二号を信じよう。一号みたいな切れ味はないが、二号だって地下二階ではオーバースペックなはずだ。

 今度は小振りに振ってみる。神授の剣で巨大蟻の頭部を斬る。体液がちょっとグロいが気にしているヒマはない。

 俺の足にかじりつこうとする巨大蟻に蹴りを入れて剣で頭部を叩き斬る。ついでに剣の威力を確認するために胴体を斬ってみる。二回目の斬撃の前に巨大蟻は蒸発した。神授の剣はジャイアント・アントには十分な威力があるようだ。


「ふう」


「お疲れ様。ビギナーにしては上出来だよ。どっかで人でも斬ってたの?」


「ええ。ゲームの中で」


 正直に言えばジャイアント・アントに勝てたのは神授の剣に業のおかげだろうが、出来れば剣の事は話したくない。ここはVRMMORPGのようなPKはできない便利な迷宮ではないだろうからな。


「そういえば黒猫亭では水は無料なんですか?」


「無料だと無駄遣いする奴がいるんで有料なの。バケツ一杯で銅貨一枚よ。お湯なら二枚ね」


 やっぱり世の中世知辛い。

 しかし、剣のメンテナンスはマメにしておかないとな。

お疲れ様でした。

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