第2話 死龍ロア
英語の使い方はわざと間違えています。受験生は気をつけて
って書かなくてもよかったかな?
汗をタオルで拭きながらインナーの内側を拭いていく。ひんやりした風が気持ちいい。
今いる場所は階層を跨ぐ階段の途中である。外の風景が見えるのはこの階段の右半分が吹き抜けだからだ。高所恐怖症の人には無理なダンジョンとはこのことだ。対して左側の壁はいかにも洞窟といった感じで鍾乳洞に似た天井からのでっぱりがあるが、構成物はまったくべつものだろう。踏み外して転落しましたは話にならない。先を見ると冒険者のパーティが待っていたので、軽く会釈をしながら登りきる。この階段は一列で通るのが常識で交差するときは階段の入り口で待たなければならない。
このダンジョンに挑んでいるパーティは少ない。ソロが多いかと言われればおそらくは私だけだろう。スカイランドは田舎だ。人もあまり住んではいない。空中都市とは名前がいいが、高度なため作物も育ちづらく、水も少ない。今一番人数が多いのは王都ラシュトルの首都である水の都アクアシティだろう。あそこには冒険者もたくさんいるし、近くにはダンジョンもいくつか存在する。つまり、この辺境にいるのはもの珍しいといえる。
「こ、こんにちは。」
「こんにちは。」
登山のあいさつのように冒険者と会えば挨拶を交わすのが普通だ。首都にいた私からしてみればあまりなじみのない光景だが、この4F層に来るまでに二回パーティと会ったが、二回とも挨拶を交わした。首都はあまりに人数が多いので挨拶する習慣がなくなってしまったのだろう。
何故だろう。やはり奇異なものをみる視線を感じる。
「(あれ、どこのお嬢さまだよ。)」
「(知るか、あんな装備見たことねえよ。)」
「(あれ装備か?ドレスだろ。)」
「(色気づいた冒険者の行き着く先があんなのじゃないの?ま、私には関係ないけど!)」
聞こえてますよ。
最後の紅一点の女性は私の存在が気にくわないのだろう。ま、私にも関係ないけど!
そうもそのはず、この特注品の白銀一式装備は見た目がドレスともいえるローブなのだ。ついでに靴もヒール。ついでに手袋は肘まである。本当にドレスなのだ。
ドレスで選んだわけではないと弁明させてもらうと、世界にひとつしかない白銀の靴を私は見た目で欲しいと思ったわけではない。高性能だったから欲したのだ。SPD+15なんて伝説の装備でもお目に掛かれない性能なのだ。それは喉から手が出ますよ。割と有名な鍛冶屋が一年かけて作り上げた傑作だという。ちなみに大きさは22.5cm。オークション会場に入るためにはこの靴の型に入らない貴婦人が多かったお蔭で落札高が低くて助かった。本当は24cmにする予定だったが作っているうちに小さくなってしまったのが原因だとかで売れるなら履ける人に売ると鍛冶屋が他の客、断固拒否の姿勢をとっていたため私が手に入れられた。
高性能だったかどうかは他の人にはわからない。私だけが持っている世界の加護のひとつ、『鑑定眼』でこの靴を見たからだ。まあ、ヒールにはなかなか慣れなかったけど今はもうきちんと履きこなしている。
「さてと行きますか!」
彼らは帰り、私は行き。次の階層を目指すためにスケルトンメイジ、グールウルフ、、スケルトンナイトなどを倒していく。G・バットは3Fまでだった。そして私は6Fに向かうために階段を探し回りつつ、地図を埋めていく。
マジで世界の加護は便利すぎる。
6F
6Fに入ると敵の数が他の階よりも少なく感じた。敵ラインナップは4F、5Fと変化ないが、これが少ないと言うことは何かある。宝箱がトラップでモンスターコールだったりする。しかし、ここは6F。10層となるこのダンジョンゆえ、そろそろであった。
私は回廊を歩いていると洞窟とは思えないほど大きな部屋に出た。
「ロア…」
龍の死体でできた魔物と呼ばれる存在だ。羽は退化して飛ぶことはできないが、ゾンビとしての強靭な筋力からの巨体とは思えない速度を可能にする。ロア、A級難易度とされる魔物だ。
「中ボスにしては強いな。」
これより前にあった冒険者は3組、そして中ボスが存在すると言うことはここ数日中ボスが倒されていない。つまり、私と前の3組と合わせて4組しかこの洞窟には挑んでいないことがわかる。これより先はこの数日、誰も踏み入っていないのだ。
「水の法衣!」
保険として水の法衣で防御力を上げる。その瞬間、ロアが跳ねた。天井すれすれからダイブしてきたのだ。前足が地面に刺さると小型のミサイルが衝突したように抉れ、風圧は周囲の地形を歪ませる。しかし、遅い。巨体の割には速いが、私から見ればとても速いとは言えない。
「太古の炎!」
太古の炎(エンシェント・フレア)、消費MP100。
Lv.4炎魔法。炎が距離を増すごとに大きくなり、ただ破壊という点を極めた攻撃だ。振れた物質の結合を阻害していくために温度は高く、白い炎となっている。Lv.4魔法の中で最も攻撃力を持つ魔法だ。これはもっとも攻撃性の高い炎魔法だからともいえる。
「はあ、一撃か。雑魚と大して変わらないじゃん。」
しかし、これは私にしかできない芸当でもある。A級冒険者は冒険者の中でも一部でしか存在しない。その中でも魔導師といえば希少中の希少。それでいてINTのステータスは一般A級魔導師の倍。MPにいたっては20倍近くもあるのだ。先の『太古の炎』は打てて二発。ついでに詠唱込み。ついでに言えば『太古の炎』はAAランクの冒険者が取得可能とされる魔法である。そんなものを覚えている魔導師は数少ないというか、この世界にいるかも怪しい。されど、万能型の器用貧乏な魔法剣士である私はあふれかえるばかりのMPを保有している。この一週間で放った魔法は魔導師が一年、二年冒険して放つような程度ではない。おおよそではあるものの20年放った量に該当する。
いくら20倍の魔力とはいえ、そんなに多く放てるかと言うと、それはMP回復薬に秘密があった。HP回復薬は決まったHPを回復する。しかし、MP回復はMaxMP(MMP)の10%や30%といった回復具合である。初心者魔導師のMPは100にも満たない。しかし、私が使えば、一週間前でも340、1020という回復力を見せていた。その回復した魔力で雑魚を狩るだけでMP回復薬を買うだけの値段に加え、十二分に貯金可能と言うわけだ。無限在庫にある一定量のMP回復薬を積めて魔法を放っていた。
つまり、私は使用回数でもベテラン領域なのだ。冒険者としてはまだ二週間の新米だけどね。
「採取!」
ところで、魔法の言葉はこの世界では常用されず、何を言っているかは判明できていないが、採取はFall inではないと言っておこう。直訳すれば集まれという号令だ。採取素材が自主的に集まってくれるなよ。ギャザーじゃないのかと常々疑問に思う。
「死龍の朽眼、死龍の鱗、死龍の朽翼、死龍の爪っと。」
無限在庫に死龍の素材を放り投げながら、私は先に繋がる階に足を踏み出す。次はボス手前の層、7F~9Fだ。出現するモブ(雑魚)も一筋縄ではいかないと空中都市のギルド『空の民』のギルド長にも注意されている。さて、どうなることやら。
現在地、風龍の洞窟6F
ここまでの経緯
94年7/6恋降り立つ。
94年7/7恋旅立つ。
94年7/12冒険者ギルド所属。
94年7/15オークションで白銀の靴を落札。
94年7/16永久の地下宮殿洞窟で無双。薔薇魔女の杖剣を入手。
94年7/17無双開始。
94年7/19鍛冶屋イクサに気に入られ、靴以外の白銀装備一式をローンで購入。
94年7/20無双に魔法が加わる。
94年7/25空中都市スカイランドに到着。
『物語開始』
94年7/26風龍の洞窟中ボス撃破。
ここまでの武器・魔法使用頻度
剣44,000回
炎魔法45,000回
水魔法7,000回




