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第11話 ユリア

 山道の中で整備された街を進む馬車。貴族。このラシュトルの国にも貴族はいる。しかし、貴族と言うのは常に命を狙われる存在であり、今もこうして山賊に襲われている。


「逃げてください!ベルカ様!ぐあああ!」

「くそ!大火球メガ・フレイム!くそ!MPマジックポイントが足らぬ!」


 老人は必死に魔法を発動させるが、それも潰えた。


「終わりだな。金品は俺らが預かる。死ね!糞爺!」


 貴族は決して強くはない。そのため多数の護衛を付けて外を出るのが一般的だ。しかし、貴族にも財力の底がある。税を引き上げれば町に住む|魔法使い(人々)から反感を受け、百姓一揆ならぬ百魔一揆が発生する。そうなれば終わりだ。税の徴収を誤ると財力が減り、自身の身が危ぶまれる。それを行い、かつ儲けを出せるのが剛腕の貴族で、そうではないものは衰退していく。

 ベルカと呼ばれたゲルギオ・ベルカは老齢の貴族であり、事業を企てていた最中で護衛に掛かる出費を渋っていたところを狙われたのだ。


「おい!こいつをどうにかしろ!」

「待ってくれ頭領!こんなの手が終えねえよ!」


 山賊の前にいたのは1人の少女だった。風を纏い、空を跳ね、山賊を次々に切り刻んでいく。少女は殺されかけていた貴族の前に立つ。


「な、何なんだよ。てめえは!?」

「賊に名乗る必要なんてなかろう。主らは黙って妾に斬られればよい。」

「ふざけんな!誰がてめえなんかに!?」

「行くぞ。」


 突如として現れた少女の攻撃に山賊たちはなすすべなく倒され捕縛されていく。一瞬の出来事であった。


「な、何者じゃ!?」


 少女というには烏滸がましいほどに美しさを兼ね備えている。ゲルギオはその美少女に話しかける。しかし返答前に貴族の顔には驚愕の表情が張り付いていた。その者の姿を知っていたのだ。


「私はユリア。ユリア・ブルーレイン。」


 冒険姫の称号を持つラシュトル国の大公ブルーレインの三女、ユリア・ブルーレイン。ゲルギオがこれから訪れるはずだったベルカ領の隣に広大な土地を構えるブルーレイン大公の娘であった。




 その頃


「はっ、はっ、はっ。」


 草原を疾走している私の視界に林が見えてきた。この公道は途中で森に入り、山を抜けてベルカに入る。その先に目指す場所ラスベルがある。古代王都と呼ばれる地だ。

 それよりも2時間も走っているのでそろそろ“例の場所”に着く頃だ。楽しみで仕方ない。そんなにやけ顔を浮かべていると目線の先に馬車が現れた。その前に血の匂いが漂っていたので森になりつつある公道外れの林に飛び込む。


『ええ、ありがとうございます。』

『いえ、お礼はいりません。ベルカ様、我が家へ案内いたします。』


 どうやら貴族同士の会話みたいだ。しかし、我が家というからには少女の方も貴族なのだろう。このままやり過ごそう。


『残党か!?』


 何故気づかれたし!?

 少女は私の位置がわかるらしく一直線に向かってくる。私と同じ『探知』スキルがあるとは到底思えない身分だ。貴族は派手な魔法を好む傾向にあるため、先天的に『探知』スキルを持っているという極めて低い割合になる。だが、それは一般的に“魔物”に対してだ。私は人間だ。

 しかし、そんなことを悠長に考えている暇はない。私は左剣マインゴーシュを引き抜き、少女の長剣に合わせて右に弾く。その勢いで公道に飛び出した。


「賊め!覚悟!」

「待て!私は賊ではない!」


 少女の従者と思われる黒髪の青年と赤毛の女性が飛びかかってくる。

 しかし、遅い。

 少女もそうであったが、SPDがおおよそ5~7だろう。私の3分の1程度の速度では攻撃は受けるはずもない。私は2人の長剣を片方は左剣マインゴーシュで受け止め、もう片方は足で鍔を止める。ローブとはいえ、ドレスみたいな代物だ。鍔を受け止めている女性はもちろん、隣にいる左剣マインゴーシュで弾いた青年にもパンツを見られただろう。やってから気づいたが時すでに遅し。


「あ…」

「なっ!?」

「見るな!」


 私はすぐさまスカートを抑える。林から飛び出そうとしてきた少女も今の光景を見たらしく固まっている。


「この変態!」


 固まった女性陣2人は置いて、私は青年を殴り飛ばした。


「はあ、はあ、はあ。」

「あ、あの…」

「…何ですか?」


 私が話しかけてきた女性を睨み付けると怯んだ。


「武器1つで受け切るなら、ああなるよね。」


 ぼそぼそと呟いている主人と思われる少女に私が向かう。


「あなたの従者に痴漢されました。慰謝料を要求します。」

「あれは変態です。私の従者ではありません。」

「ユ、ユリア様!!僕は…」


 顔を真っ赤にして私を見ている。時間が経つとどんどん赤くなっていく。私は青年に近づいて一言。


「大嫌いです。」


 青年の顔が真っ青になった。むしろ青年が真っ白になった。


「いきなり襲いかかってしまい申し訳ありませんでした。」

「いえ、こちらもタイミングが悪かったみたいですし、賊とおっしゃっられていたので、…盗賊の類と交戦した後のようですね。」

「ええ。それで私の『探索』スキルに人物が引っかかりましたので、賊と判断して斬りかかってしまいました。本当に申し訳ありません。」


 『探索』と『探知』は似ているが、別系統のスキルだ。

 『探知』は自分の敵となる魔物を見つけるスキルであり、『探索』とは自分の周囲に敵味方区別なく、生命の存在を知らせるというもの。


「いえ、ただの冒険者たる私に頭を下げる必要はありません。」

「は?」

「冒険者?」


 どうやら2人は盛大な勘違いをしていたようだ。


「ええーーー!?」

「はあ…」


 貴族の令嬢は驚きの余り声を上げ、護衛の女性はため息を漏らす。


「だって、そんな良いドレスを着ているじゃないですか!?」

「ここは従来の公道で、馬車も護衛もない、どこにそのような貴族がいらっしゃいますか?」

「ここに。」

「うぐっ…アリアはどっちの味方なのよ。」

「あなたの敵ね。」

「どうしてよ!!」


 何かよくわからなくなってきたぞ。

 このアリアと呼ばれる女性はどうやら護衛ではないみたいだ。先の私の発現でこのお転婆美少女が“護衛”と“馬車”を持っていないことが判明したからだ。私は顔面蒼白な青年を見てから、2人を眺める。


「冒険者パーティですか?」

「ああ、気づかれたか。」


 護衛のようで護衛じゃなく、騎士のような冒険者で赤毛の女性が答える。これは護衛と間違えても仕方ない。青年の方はまるで見習い騎士だ。


「そうよ。この私、ユリア・ブルーレインをリーダーとしたS級ランクのパーティ、疾風の騎士団エアロ・ナイトよ!」


 知らなかった。

 そういう表情をしたらユリアは罰の悪そうな顔をしてそっぽを向く。


「まだ結成して一時間ですから…」


 それは知らない。この少女は私に何を求めているのだろうか?


「い、いいじゃない。それよりもあなた、何者?私たちの攻撃を防いだことは並の冒険者じゃないし、身なりだってすごい豪華よ。それで冒険者と言うには無理があるわ。」

「私はレン・アマガイ、…そうね………王都では暴風姫ストーム・プリンセスという不名誉な2つ名があるわ。」


 あまり好いている名前ではないが、こういう場合は仕方ない。この名前ほど有名なものがないのだ。


「「「サインください!」」」


 三者一斉に同じことを言う。顔面蒼白だった青年までも同じだ。

 どうしてこうなった?

 この先の湖で今すぐにでも水浴びしたいとは口に出せる雰囲気ではないみたいだ。

 遠くからこちらに必死に駆け寄ってくるおじいさんにでも助けを呼びたいところだ。


 現在地、黄金街ブルーレインの郊外

 暴風姫で2つ名は統一…

 以前に違う2つ名を載せていたら訂正します。書いた本人が書いた内容を度忘れしている事態で申し訳ない。設定資料を変えながら書いているので訂正が結構酷いです。やはり計画通りには進みませんね。

 再度

 1部での2つ名は暴風姫で行きます。

 この話の題名が暴風姫かユリアかで迷いました。これからも更新頑張ります。あくまで自己満作品を…

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