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行きはよいよい
少し前を、とぼとぼと年寄りが歩いていた。
向かう方向が同じらしく、さっきからずっと俺の前に居る。長く後をつける格好になるのは、俺もあちらも嫌だろう。歩を速めて追い抜く事にした。
が、追いつけない。
とぼとぼと歩いているふうにしか見えないのに、どれだけ急いても距離が縮まらない。
あまりに不可解な現象に足を止める。
すると自分が見知らぬ景色に紛れているのに気づいた。町並みにも家々にも、どこひとつとて覚えのない土地に、いつしか俺は迷い込んでいたのだった。
唖然と見回すその間に、年寄りの背は消えていた。
通りすがりの人に道を尋ねて、どうにか帰っては来れた。
年寄り追ったのはほんの十数秒の事であったのに、しかし家までは都合2時間を要した。




