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居座る
年の暮れのことだ。
大掃除をしていたら、開けた窓から不意に火の玉が飛び込んできた。
火事になっては大変だと後を追うと、人魂は仏壇のりんの上に腰を据えて寛いでいた。
近くで見れば耳鼻眼口が揃って浮かび人の面を成している。
さては親類縁者の魂かしらんと、慌てて家族を呼び集めて確認をした。
けれど、この顔を見知る者は誰もない。どうやら縁もゆかりもない赤の他人であるらしい。
当然追い出しを試みたが、、何度放逐してもそれはふわふわと仏壇へ舞い戻るのだ。
いらっとして叩きがけしてやると、大変迷惑そうな顔をする。するが、それだけで延々とりんに居座っている。
だが邪険な扱いを受け続けるのは、やはり居心地が悪かったのだろう。
人魂の色味は次第次第に薄くなり、そのうち完全に見えなくなった。




