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  作者: 鵜狩三善


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時計塔

 時計塔はそこにある。

 高さにして17メートル。壁面にも内部にも、余すところなく時計盤が貼り付いている。

 在るのはアナログの時計だけではない。ところどころの隙間から、蛍光色のデジタル数字が顔を覗かせていたりもする。

 塔にそれらを備え付けていったようでも、時計を組み上げて塔の形に仕立てたようでもある。

 だが誰がどう見ても、それはただ時計塔としか呼べないものだった。


 ただし時刻は分からない。

 盤上の針は他の盤の針と絡まりあう。短針と短針が切り結び、長針が長針を追いかける。

 アラビア数字たちは横に十桁も二十桁も連なって結合して、どこまでがひとつの区切りになっているのか判別がつかない。

 塔の内部にも時計たちは繁茂(はんも)していて、茨のように絡み合って到底人は立ち入れない。

 時計塔は人間の一切を拒絶しているかのようにも見える。


 しかし時計塔守は語る。


「時計塔は世界中の全ての国、全ての街、全ての家、そして全ての人の時間を刻んでいるのです」


 細分化された個々の時間を表しているのだと言われてしまえば、誰もどれがどう間違っているとは指摘できない。

 それは確かに世界のどこかで生きている、誰かの時間であろうから。自分の時間であるかもしれないから。

 けれど時の表しが役割だというならば、それならばやはり時計塔は時計としての機能を果たしていない。今何時かと塔を見上げても、誰もその答えを得られない。

 すると、


「それでいいのです」


 時計塔守は答える。


「ここにはこの世の全ての時間があります。つまりこの世の全ての真理であり、全ての答えであるのす。真理とはそう簡単には見つけ出せないから価値があるものであり、答えとは個々が別個にそれぞれに抱く自分だけのものなのであり、同時に他の真理と答えと相絡まって形を為すものであるのですから。世界は個で成り立ちながら、決して個だけでは成り立てないのです」


 なるほどと僕は思う。

 それならいつか、僕も僕に似合った、僕だけの時計を手に入れよう。

 そんなふうに思った。

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