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  作者: 鵜狩三善
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流される

 妻から相談があった。息子がトイレを流さないのだという。

 用を足したら便座の蓋だけを閉めて、知らぬふりで出てきてしまうらしい。洗面所で手を洗ってはいるものの、流すべきものが流れていない状況に変わりはない。

 どうしてそういう真似をするんだと叱りつけると、息子は涙目になって、「だって、流すとおっかない声がする」と言った。つまりは水洗の音が怖いのだろう。

 呆れて妻を見やり、


「とりあえず、お前が傍についていてやれ」


 こちらは一日仕事で疲れているのだ。この程度の家のことくらいはきちんと対応して欲しい。

 言外にそうした空気を匂わせると、彼女はくすんだ顔で頷いた。



 そののち晩酌を楽しんでいると、息子が妻に声をかけ、ふたり連れ立って手洗いへ向かった。

 二度三度大人がついていってやれば、トイレなど別段怖いものでないと息子も理解するだろう。そう思いつつ肴を摘まんでいると、真っ青になった息子が駆け戻ってきて、


「お母さんが流れちゃった!」


 慌てて手洗いに向かうと閉じた便座の奥からは、未だ続く水洗と、断末魔めいた妻の声とが轟いていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] やあ、ジョージィ! あいさつしてくれないのかい? と、トイレからペニーワイズが挨拶してきたのかなあ?
[良い点] 水に流すと言いますが、流れていかないものもあるのでしょうね。 流れていってしまったのは、彼にとってその程度のものとなってしまったということなのかも。
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