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  作者: 鵜狩三善


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残念無念

 暑さによりも湿度に耐えかねて、エアコンを入れる事にした。

 暦の上ではとうに秋だが、残暑の名目で夏は居直って居座り続けている。連日の熱帯夜は如何とも耐え難く、貧乏学生の俺も、時には文明の利器に頼らざるをえない。

 単純に冷房入れて寝ると喉が痛くなるので好まない、というのもあるが、それよりもずっと睡眠不足は身に響く。いい加減ぐっすりと眠りたい。

 そういう次第で、四階だからと在宅時は常時網戸のままだったベランダの雨戸を久々に閉めて、俺は快適な睡眠を得る──はずだった。


 目を覚ましたのは音の所為だった。


 かり。かりかり。かりり。


 ベランダから、何かを引っかくか細いそれが途切れ途切れに、しかし執拗に続いている。

 寝ぼけた頭で虫か何かとも考えるが、違う。

 そんな小さなものの音ではないと何故か分かった。

 

 かりかり。かりり。


 音は執拗に、諦めずに続く。

 明らかに意志を持って、俺の部屋に入り込もうとしているのだ。

 そこでようやく、半覚醒の頭が醒めた。

 何が──一体何がこんな夜更けに、しかも四階のベランダの雨戸を引っ掻くというのだ。 

 布団の衣擦れに気をつけて上体を起こす。

 音はまだ続いている。

 聞こえる位置から判断するに、掻かれているのは丁度、人の膝の高さくらいだ。


 かり。かり。かりり。


 音は止まない。執拗に、執拗に掻き続ける。

 ふと、ある事に気づいた。

 雨戸を揺らす事も出来ずにか細く、か弱く音を立てるばかりのそれ。

 だがその程度の力でも、もし遮るのが雨戸でなかったなら。

 もし今夜も網戸であったのなら。


 ざあっと肌が粟立った。

 その途端、まるで俺の理解を察したように音が止んだ。

 代わって聞こえたのは、深い深い嘆息。心底残念そうなため息。

 そして、それきり夜の静寂が降りた。

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