浮かぶ顔
寝苦しくて目を覚ますと、体が動かない。
金縛りだ。
話には聞いていたが、体験するのは初めてだった。冗談抜きに指一本動かせない。
二段ベッドの上で眠っている妹に難を報せようと頑張ったけれど、呻き声すら出なかった。
それでも全身の力を振り絞っているうちに、どうにか薄くまぶたをこじ開ける事ができた。するとその狭い視界の中、闇の中に、ぼんやりと浮かぶ顔があった。
心臓が止まるかと思うくらい驚いたけれど、すぐに思い出した。
あれは妹のポスターの顔だ。
どこからか貰ってきたそれを壁に貼ろうとしているのを見て、格好悪い趣味が悪いと寝る前さんざんけなした記憶がある。なんだ、ポスターなら怖くない。
ほっとした所為か、大元の金縛りが解決していないのに、私はそのまま眠り込んでしまった。
翌朝、目を覚ましたら思い出して腹が立った。ひっぺがしてやろうと、私はポスターを睨みつける。
が、そこには何も貼られていなかった。ど昨夜の顔はそこになかった。
あのポスターはいつ剥がしたのだと妹に尋ねると、
「お姉ちゃんがあんまり馬鹿にするから貼りませんでした!」
と怒られた。
じゃあ私が夜中見たあの顔はなんだったのだろうか。
ひょっとしてあの金縛りは、貶められたポスターの恨みの発露だったのだろうか。いやいや、ポスターを貶された妹のこそかもしれない。
ポスターはどうでもいいけれど妹は時々怖い。
学校帰りに甘いものでも買って来て、ご機嫌をとっておこうと思った。




