見誤る
友人の話である。
夜が更けると、こつこつと部屋の窓が鳴る。それが一日ならず続いた。
彼の部屋は通りに面した一階で、道行き際に悪戯心で叩く者があるのだろう。
無論夜の事で雨戸は閉めているから、不法侵入される心配はない。ないが、だからといって気にならないというわけでは断じてなかった。何より癇に障る。
いい加減下手人を怒鳴りつけてやろうと、木製バットを片手に窓際で待ち構えた。そして音がした瞬間に、がらりと雨戸を引き開けた。だが夜道には誰もいなかった。
怪訝に思いつつも、仕方なく雨戸を閉め直そうとしたその瞬間、窓の上方から覆いかぶさるように、さかしまの子供がぬっと顔を出した
。
出したはよかったが、どうも目測を誤ったらしい。
ふたりの額は激しく激突し、友人は衝撃と激痛にうずくまった。「目から火が出るって表現があるだろ? ホントにそんな感じ」とは彼の言である。
ようようにして顔を上げると、もうそこには誰も、何もいなかった。
向こうも痛かったし、気まずくもあったのだろう。
その日以来、窓が鳴る事はないそうだ。




