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  作者: 鵜狩三善


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満員電車

 完全に体調を崩してしまった。

 朝は大丈夫だろうと思ったのだけれど、二限目を終える頃には熱が高いのがはっきり自覚できる。

 友人にノートを頼み、午後の授業は自主休講として早退する事にした。

 熱っぽい頭でホームにたどり着くと、丁度電車が来たところだった。更に折り良く車内はがらがらで、楽に座って帰れそうだった。


 誘われるように乗り込みかけて気がついた。急行だ。最寄の駅には停まらないから、折角のタイミングだが一本待たねばならない。

 乗車位置に戻り、気だるさに負けて下を向く。発車を告げるベルが心なしか遠く聞こえる。ふと、気配を覚えて目を上げた。


 見られていた。

 一瞬前まで誰一人の存在していなかった車内は、一転すし詰めの満員になっていた。

 窮屈そうに立つものも。乗車口脇のスペースを確保したものも。つり革に体重を預けるものも。向かいの座席のものだけでなく、降車側に座るものも。ベビーカーの上のものも、網棚の上のものも。

 全ての乗客が私を見ていた。

 全ての目が私に注がれていた。

 ドアが閉まる。車体が動き出し、ホームから滑り出ていく。

 列車は最後尾まで満員だった。


 私はそれを、ただ茫然と見送った。

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