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時効
学生の時分の話になる。
私が制服を着ていた頃には、まだ校内に焼却炉があって稼働していた。
そこで私は、友情を焼いた。
無論人を焼いたわけではない。
ノートや本や手紙や……そんな親友だと思っていた相手との、縁の品を焼き捨てたのだ。
進級でクラスが別れた後くらいから、私は彼女からいやがらせめいたものを受けるようになっていた。
理由がわからなくて悲しくて苦しくて、もうすっぱり考えない事にしようと決めて、訣別の為に本人を呼んで、その目の前で全部を焼いた。
やがて卒業を間近にして、彼女は自ら首を括った。
聞けば進級当時から、彼女はいじめに遭っていたのだという。
色々と憶測は浮かぶけれど、真相は闇の中だ。
今でも彼女の命日になると、どこからか焦げた紙の匂いがしてきて、一日私に付きまとう。
匂いは、年々薄まってきているように思う。
おそらく、もうじき時効になってしまうのだろう。