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  作者: 鵜狩三善


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圏外

 父の頭に腫瘍(しゅよう)が見つかった。

 最近(とみ)に頭痛がするとかで、病院嫌いの父を母が無理に引っ張っていき、その結果発見できたものだった。

 幸いにも良性で転移の心配はなく、全摘出すれば症状の回復が見込めると医者は言う。

 手術の成功率も問題がないほどに高いとの話で、俺たち家族はさしたる不安もなく執刀の日を待ち、そしてそれは無事済んだ。


 だが以来、父は豹変した。

 笑顔を絶やさぬ温厚篤実な人柄であったのに、些細に立腹して暴力を振るうようになった。酒に溺れ博打に手を出し、挙句は外に女を作って母を泣かせた。

 聞きつけてやって来た祖父母や兄弟の叱責にもまるで耳を貸さず、


「ようやく声が届かなくなったんだ。これからは好きにさせてもらう」


 そんな事を喚くばかりだった。

 だから父が何者かに刺し殺されたその時も、俺たちが覚えたのは安堵だった。



 ただ、冷たくなった父が帰宅したその折、俺はぞっと身を震わせた。

「私を除いたらお前もああなるんだよ」と。

 頭の中で、誰かが言う声がしたからだ。


 以上は橘 塔子様よりの原案「腫瘍を摘出してみたらとんでもないもんが出てきた」を元に創作したものです。

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