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声援
風邪を引いた。
久方ぶりに高い熱を出した。眠っていると、自分の呻くうわ言で目を覚ますような有様だ。
そうして寝たり醒めたりを繰り返していると、耳にどこからか、ぼんやり人の声が届く。何を言っているのかは定かならない。けれど確かに声がする。
朦朧とした頭を起こしてで出所を探る。するとそれは枕元に放置した、読みさしの本からするのだった。
曖昧模糊なる遠い声を聞き取ろうと、ひんやり冷たい表紙に耳を押し当てる。
「フレー! フレー!」
繰り返し叫ばれていたのは激励だった。
声援は、どこの誰のものとも判らない。けれど無性に懐かしい響きがした。
何故かひどくほっとして、俺はことんと眠りに落ちた。夢も見ない、深い深い眠りだった。
翌朝目を覚ますと、熱はすっかり引いていた。
そういえばこれは、親父の蔵書だったと思い出した。




