表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: 鵜狩三善


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

403/1000

探される

 数十年連れ添った妻と死に別れた。

 癇癖(かんぺき)が強く、しかも浮気性な私であったから、苦労も迷惑もかけ通しだった。だがそんな夫に文句一つ言わずについて来てくれた、大切な伴侶だった。


 彼女の死を看取り、一旦病院から戻ったその夜の事である。

 我が家の天井の付近を、半透明の顔が漂うのを見た。それは懐かしくも美しい、若かりし頃の妻の顔だった。

 鮮明と不鮮明の境界を漂いながら、妻の輪郭(りんかく)は家中を彷徨っている。

 その口元がひたすらに動いているので耳を澄ますと、私の名を繰り返し続けているのが知れた。理由は知れないが目の前の私を察知できず、探しているものであるらしい。


「ここだ。ここだよ」


 声をかけるが反応はない。

 私の事が、やはり見えも聞こえもしないようだった。

 どうしたらよいかと思案していると、不意に妻の呟きが止んだ。そして数秒の静寂の後、陰にこもった物凄い声で、


「ここにいると思ったのに。ここにいるはずなのに。見つけたら、絶対殺してやったのに」


 立ち(すく)んだ私の前で妻の顔はぎりぎりと歯ぎしりをし、やがて消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ