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  作者: 鵜狩三善
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聞き入れる

 信号を待っていると、隣に自転車が着いた。

 半歩距離を取って見やると、それは綺麗なお姉さんだった。お姉さんは小声で、でも何か必死に携帯電話で話していた。

 自転車に乗ったままなのに危ないな、と思った。

 お姉さんはそんな私に気付きもせず、ただ電話に集中しているようだった。


 交通量が多い通りなので、会話の内容は聞こえない。でも何か酷い事を言われているのか、お姉さんの表情は悲痛だった。やがてぽろぽろと泣き出しもした。


「私までにしてください。私で終わりにしてください。私までにしてください。私で終わりにしてください」


 声のボリュームが上がって、(すが)るように繰り返しているのが耳に届いた。

 綺麗だけれど、頭のおかしい人なのかもしれない。私がもう半歩距離を開けた時、お姉さんの顔がぱっと(ほころ)んだ。


「ありがとうございます」


 はっきりそう言ってから、お姉さんは強くペダルを()いだ。

 信号はまだ、赤のままだった。 

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