どんぐりころころ
田舎のお爺ちゃんお婆ちゃんの家に行くと、する事が何もなくて困った。
テレビもない。ゲームもない。外に遊びに出ようにも、道は分からないし友達はいない。だから子供の頃の私は決まって、お爺ちゃんちの近くにある神社へ探検に行った。
鎮守の森は子供には随分と深く、多分私はひとりで、綺麗な木の実を拾い集めては磨いて宝物にした。
多分、と冠をつけるのは、今はもう顔も思い出せない誰かが、その時一緒に居たような気がするからだ。
でも祖父に尋ねても祖母に尋ねても、その当時私と同じくらいの子供は近所にはいなかったと言う。
ならばそれは小さい子供が抱く特有の幻想、イマジナリーフレンドと呼ばれる類のものだったのだろう。
そのうちに私は大人になって、田舎を訪れる機会も減った。だからそんな思い出も、もうすっかり忘れかけていた。
この前の正月休み、随分と久しぶりに祖父母の家に赴いた。懐かしくなって神社へも足を運んだ。
その夜、延べてもらった床に横たわろうとすると、小さく固いものが背に当たった。
なんだろうと正体を確かめると、磨いたように綺麗などんぐりがひとつ、ころんとそこに落ちていた。