失せ物探し
街角で辻占いをして暮らしている。
人相手相何でも見るし、学問恋愛仕事対人、委細問わずに相談に乗る。
こう言えば舌先三寸口八丁で世の中を渡り歩くかのようであるし、実際それは遠からずなのだけれど、ひとつだけ胸を張れる事がある。
私の失せ物探しは、失せ物探しだけは本物なのだ。
探し物を聞いて顔を見ると、ぴたりと在り処が脳裏に浮かぶ。それは映像である時もあるし、文章として現れる事もある。
どういう術理原理であるのかは、私自身にも分からない。
ただ見えない事があっても、見えたものが外れた事は今までにない。
だから私の看板には、「失せ物」の文字が一番大きく書いてある。
その晩も、私の前に客が立った。
気配に顔を上げると、ぴしりとスーツを着込んだOLだった。もう夜だというのに、濃い色眼鏡をかけているのが不可思議だった。だが客になってくれそうな相手を放っておく手はない。
「失せ物ですか?」
声をかけると、躊躇の後こくんと頷く。
「何をお探しかしら?」
再び問うと彼女はゆっくり眼鏡を外し、
「わたしのめだま」
晒された眼窩は、ふたつともぽっかりと空洞だった。
悲鳴を喉の奥で殺して目を閉じた。幸い、すぐに若い男の顔が見えた。
おそらく心当たりと合致したのだろう。その男の特徴を告げると彼女は嬉しそうにまた頷いて、きちんと見料を払って去っていった。




