122/1000
手を握る
眠い目を擦りながらベッドから抜け出した。
顔を洗うべく洗面所に向かおうと、部屋のドアノブを掴む。
と、異様な感触がした。
生暖かい。そして柔らかい。
何事かと目を落とすと、それはノブではなく人の手だった。手首だけがドアノブの位置に、握手でも求めるかのように生えている。
私は迂闊にもそれを握ってしまったのだった。
慌てて手を離そうとするが、向こうが握り締めて離してくれない。どうやっても振りほどけない。
なんでこんな目にと涙が出そうになって、はっと閃いた。
隣室は姉の部屋だ。大声で助けを求めれば、きっとなんとかしてくれるに違いない。
「お姉ちゃん、助けて!」
「助けて欲しいのはこっちの方!」
叫び声に、間髪入れぬ応答があった。
どうやら姉妹揃って、同じ目に遭っているようだった。