表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

びっくり仰天(死んだ目)

 やあやあ皆様、ご機嫌麗しい朝だね。

 今日から私は高校生だ。目指していた高校に無事入学を果たせたことを知った一ヶ月前が懐かしいよ。時の流れは早いなぁ。



――――――――――(まさしく光陰矢の如し)♪」



 そんなことを思いつつ、くだんの高校の門をくぐる。

 私がこの春から通うのは、超名門私立茜峰(あかねみね)学園。

 進学科、スポーツ科、芸能科、普通科、そして他の高校にはない“特別才能科”の五つで成り立つこの学園は、日本でも有数な名門校。全国各地からこの狭き門を潜るために、何百人どころか何千人の人間が血反吐を吐きながら努力している。

 私ももちろんその一人。まぁ過去形だけどね。


 目の前には「お城か?」というようなどデカい校舎。赤煉瓦色の壁がこれまたオシャレで、門の正面には真っ白な噴水。……ここ本当に学校なの??

 咲き乱れる桜の木のせいで、余計に浮世離れした雰囲気が際立っている。

 とてもじゃないが学校とは思えないぞ、これは。



―――――――(素晴らしくお金)―――――――(がかかってるね)



 この学園を経営している理事長は大層な資産家だという噂だが、あながち間違いでもなかったらしいね。

 いやー、俄然楽しみになってきたなぁ高校生活! ふふふー、鼻歌歌っちゃいそー♪

 人の動きに合わせてるんるん気分で昇降口までの長い道のりを歩く私の視界に、ふっと()()()()()が映り込んだ。



『アイリ、アイリ! ここすごいねー、お城があるよ!』

「……―――――(なんでいるの)



 思わずジト目で睨みつければ、声の主はケラケラと楽しげに笑う。



『だぁってぇ、アイリが心配だったんだもーん。それにどんな学校なのか気になってたしぃ☆』



 いかにもな理由をほざいているが、どうせ冷やかし目的だろう。生徒という年齢でもないのに学園に来る神経がわからない。

 反射的に出かけたため息を堪えた。それから視線を逸らして昇降口に向かう。

 あーあー、せっかく良い気分だったのになぁ。

 アイツはいつも付き纏ってきて五月蝿いんだよねー。しかもそのくせ、別に特段理由があるわけじゃないらしいのが余計に腹が立つ。

 いつだったか、私に気があるの? って聞いた時に『え、全然そんなんじゃないけど……勘違いさせちゃった? ゴメン』って気まずそうに言われて軽くピキッたのは、私の人生でも七番目にムカついた出来事だった。ちなみに今でも許していない。


 そんなことを思いつつも、表情には決して出さない。あいあむクールビューティー。ノット変顔、ノット怒り顔だ。

 そうして涼しい顔でペラペラ喋り続ける馬鹿をシカトしていると、昇降口付近で何やら騒いでいる集団がいる。

 近づいてみると、集団には女子生徒が多い。男子生徒はその四分の一ってところかな。

 何やらキャアキャア黄色い悲鳴を上げている彼ら彼女らの間をすり抜けて中心を見てみると、三人の男子と一人の女子生徒がいた。



――(うわ)―――(顔良っ)



 渦中の四人は、驚くほど顔が良かった。それはもう、全員がその辺の芸能人じゃ太刀打ちできないような美形だ。

 周囲にいるのは、どうやら彼らのファンらしい。「嶺緒れお様ー!」とか「未亜みあちゃあーんっ!」とか、名前を呼んでいる人もいた。



「嶺緒様ー! 特別才能科に入ったというのは本当ですか!?」



 一人の女子生徒がそう叫ぶと、やたらキラキラしい顔面の男子生徒が、にっこりと素晴らしい笑顔で頷いた。



「まぁな。そのためにここに入ったようなもんだし」

―――(マジで)!?」



 思わず声をあげる。あまりにも衝撃的だったからね。


 この高校にしかない“特別才能科”、通称“特別科”は、他より一際抜きん出た才能を持った者しか入れない、少人数の精鋭科だ。

 他の科のように入学試験では入ることはできない。他の科の入学試験でその才能を認められた人間だけが入ることを許されるのだ。

 その上卒業後は、この学園の理事長が経営する国内有数の大企業『TASOGARE』に無条件に入社できる。それも、社内で最も優秀な人材が集められる部署に!

 一度入れば人生薔薇色のエリートコース。この学園に入りたがる人間が多いのも、この学科の所以だろう。


 そして特別才能科に入れる生徒は、入学初日の今日明かされる。つまり、一般の学科か特別科かは、本人も当日までわからない。

 私だって、普通科を受けたけど特別科に選ばれた! って可能性はゼロじゃない。

 まぁ、ゼロに近しいことに変わりはないが。


 話を聞くに、彼らは四人とも特別科に選ばれたのだろう。

 一学年に三人いれば良い方なのに、四人も!

 すごいなぁ、どんな才能を持ってるんだろ。



――(まあ) ――――――――(私には関係ないけど)



 私はあまり目立ちたくない。このエリート校に入れただけでも御の字なのだ。それでヨシ、それ以上は望まない。

 集団に背を向けて、クラス分けの張り出しを見に行く。

 群がる生徒たちをかき分けて普通科のクラス分けを見る。お、三クラスあるみたいだね。

 私の苗字は“鈴鳴すずなり”で、比較的早い方ではある。


 だがいくら探しても、なぜかどこにも鈴鳴の文字がない。え、なんで?

 何度も探し直すけど、鈴鳴のすの字もなかった。

 一応他の進学科やスポーツ科、芸能科のクラス分けも確認するが、やはりない。

 もしかして、私実は合格してなかったの? え、え??

 なんでぇ、と泣きそうになっていると、不意にさっきまでフラフラしていた馬鹿が戻ってきた。



『アイリ、アイリ。アイリの名前あったよ〜』



 え、どこに?

 馬鹿がやってきた方向を見ると、そっちは特別科のクラス分けしかない。……嫌な予感がするなぁ??

『ねぇ見つけてきてあげたよ。お礼は? もちろんあるよね? あれ? おーい?』と纏わり付いてくる馬鹿を振り切って、恐る恐るクラス分けを覗き、絶句した。



 〈特別才能科 出席番号3 鈴鳴すずなり藍李あいり



「―――――――ッッ!?」



 和気藹々としたクラス分け表の前、私の音にならない絶叫が空を昇った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ