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八尺村  作者: 榊みつば
7/17

7日目 田舎

「おは……」


何か……聞こえる


「お……よ」


誰だ?なんて言って


「おはよ……ご……ん」


おはよ?


「おはよ、ご……はん

おはよ!ご飯!できてるよ」

「うわぁ!」

「おはよう、よく眠れたでしょ」

「あれ?俺」

「久しぶりに寝たみたいだね」

「俺、寝てたのか

てか、重!起き上がれない」

「だって、布団何重にもしてるからね」

「なんで、そんな」

「昨日、湊が急にやるって言うから」


俺、そんなこと言ったのか

にしても、これは重すぎ!

一体何枚重なってるんだ

起き上がるのが大変だ……


「……誠大」

「なに?」

「起こして……」

「あ、出れないのか」

「おう」

「行くよ、よっいしょ!」

「ありがとう」


これ、1人の時どうしてたんだ?

出れねぇぞ

這って出ようとしても布団がついてくる


「なぁ、誠大

お前、布団からどうやって出てたんだよ」

「……え?」

「あんな何重にもした布団から」

「えーとね、這って出ようとして

力尽きてそのまま寝てる」

「出ることは無かったのか?」

「んー?朝は、カタツムリ

みたいになってたよ」

「そうか」


聞いた俺が言うのもあれなんだが

よく分からん!

誠大は、ズボラなのか

いや、でも今目の前にある

朝メシは豪華だな

和食だが旅館で出てきそうなものだ


「すごいな、こんなもの作れるのか」

「ほとんどひとりで過ごしてたからね」

「母さんは、いなかったのか?」

「あ、そういえば湊は

俺の事知りたいんだっけ?」

「あ、ああ」

「朝ごはん食べた後に教えるよ

昔からご飯を食べる時に暗い話をするの

苦手なんだ」

「わかった」


この一言で

誠大がこれから話すことは

暗い話なんだとすぐにわかった


朝ごはんを食べ終わって

2人でお茶を飲んでいた

案の定コーヒーとかはなく

お茶だけど

誠大が作るお茶は、飲みやすく美味しかった


「俺、誠大の作るお茶好きだわ」

「ほんと?嬉しいよ

でも、お茶しかなくてごめんね」

「大丈夫だ、このお茶飲みやすいし」

「俺、苦いの苦手でさ」


そう言って、少し恥ずかしそうに

頭を搔く誠大

こういう時の誠大は

普通の無邪気な子どもに見える


「それで、俺の何が知りたいの?」

「誠大の過去」

「俺の過去?」

「そう、どんな人だった?」

「……俺には、過去がないんだ」

「え?」

「この村も村人もみんな過去がないんだ」

「それは、どういう意味だ?」

「そのままだよ、分からない

俺は、母さんも分からない

どんな人なのかどんな見た目なのか

俺が、物心着く前にいなくなったんだって」

「……そうだったのか

ごめんな、辛いこと聞いたな」

「ううん、大丈夫だよ」


予想以上に暗い話だった

過去がないとは、どういう意味なのだろうか


「ねぇ、湊」

「う、うん?」

「もしさ、ここから出たらさ

俺とこの村の過去調べてみてよ

そして、教えて」


そうか、誠大は

知らないんだ

それか、忘れてしまった可能性もあるが

俺は、笑顔で頷いた


「そうだ、湊のことも教えてよ」

「え?」

「いいでしょ、俺も教えたし」

「まぁ、いいけど面白くはないぞ?」

「いいの」


俺は、昔から田舎が嫌いだった

世間が狭いと言うのか

分からないが

すぐに情報が回る

俺が誰と付き合ったかも

テストの点数も

悪いことをした時も

全部ご近所さんにすぐ情報がいく

そうなると、俺が外に出る度に

あーだこーだ言われる

それが嫌だった

変に目立ちたくない


そのせいで、俺がいじめの

加害者にされたことがあった

その時は、何とか

俺の無実を証明できたが

大人は、謝ってこなかった

全部の田舎がそうだとは思わない

だけど、俺の住んでいたところは

ご近所同士距離が近く

遠慮がなかった

そんな、大人になりたくない

早くここから出たい

そう思って

大学を卒業したら

すぐに上京する


「そっか、それは嫌だね」

「そうだろ、しかも母親は

お喋りだったから余計にな」

「大変だね」

「ほんとに、なんで田舎に生まれたんだか」

「でも、俺は田舎好きだよ」

「そうなのか?」

「うん、だって、田舎は都会とは

また違った出会いが沢山あるし

それに、湊に会えたから」

「な、なんだよ急に」

「え〜、照れてんの?」

「照れてない!」

「あはは」

「笑うなんて酷いぞ!」

「でも、湊がここに来てくれて良かったよ

こうやって、話し相手ができたし」

「俺も、誠大がいてよかった

俺一人だったらもう死んでたかもな」


ほんとに、誠大がいてくれた良かった

そのおかげで

俺は、諦めずにここにいる

生きている

特に夢もなく

ただ、この田舎から出たい

そんな気持ちしかない

俺は、1人だったら

そう、考えると

運も人生で大切なものなんだ

そう思った


「湊?」

「ん?」

「ここを出てもさ会いに来てよ俺に

俺、湊がいなくなったらまた1人になるし」


そういう誠大の顔は

少し悲しそうだった

ずっと、ひとりで暮らしてきたんだろう

だから、俺が来て嬉しいかったのだろうか

誠大は、確かにこの村の人だ

でも、違う

そう感じた

何度も感じていることだが

今日は、強くそう思った

もしかしたら、まだ人間の頃の

性格が残っているのだろうか

この村は、怖いし

正直来たくないが

誠大に会いに来るなら

来てもいいかも


「あぁ、会いに来るよ」

「ほんと!」

「本当だ」

「やったー!」


喜ぶ誠大の顔は

はしゃぐ普通の高校生の顔だった

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