3日目 村人
昨日、誠大が言っていた
あの人たちに呼ばれたら行かないといけない
その言葉が俺はずっと引っかかっていた
なぜ、行かないといけない?
拒否権がなし?
まるで、奴隷のような
飼われているペットみたいだ
全て、村の人達の言いなり
なぜ、誠大は変だと思わないんだ?
確かに、大人の言うことを聞くのは大事だが
全く反抗しないのは
あ、そういえば
誠大もこの村の人だ
そうだ、あの時
誠大は俺を助けてくれた
だけど、この村に入れたのも誠大だ
なぜ、誠大は俺をむらのなかに入れた?
なぜ、俺に色々教えた?
助けてくれると言ったが
それは、本当なのか?
そんな事を、考えていると
玄関の方から音がした
そして、誠大と村長さんが入ってきた
「一緒に来て
みんなに挨拶しに行こう」
今日の誠大は明るかった
昨日は、少し暗かった気がしたが
俺が、儀式と言いかけたからだろう
俺は、そんな誠大を見て
少し、安心した
「みんな、湊を連れてきたよ」
「おお、この子が湊かい?」
「かぁいい子だねぇ」
な、なんなんだこの村
口の中がみんな黒い
ありえないくらいに
歯が黒いのか
歯がないのか
しかも、じいさんばあさんしかいない
確かに、こんな森の奥にある村に
若い人が来るなんてないとは思うが
それにしても、おかしすぎる
この人たち何歳なんだ?
見た目が老けすぎているのに
普通に歩いて、立っている
いや、もしかしたら
老けて見える人たちなのかもしれない
そうだとしても、この人数はおかしいが
何人いるんだ?
40人くらいはいるのか
奥が暗くて分からない
人がいるのかどうか見えない
そんなことを考えている
俺に誠大は肘で突いてきた
「ほら、湊挨拶して」
「あ、えっと、初めまして
村澤湊です……えっと、迷っていたところを
誠大に助けてもらいました」
これで、いいのだろうか
何を言えばいいのか分からない
それに、挨拶って
こんな、集会みたいな形でやるのか?
普通は、村長さんと数人が集まってするんじゃ
ここの村のやり方なんだろうけど
不可解なことが多い
「湊くんは誰の家で
お世話になるのかなぁ?」
「決まってないなら、ワシがもらおうかなぁ?」
な、何を言っているんだ?
誰の家でお世話になる?
ワシがもらう?
俺は、物だと思われてるのか?
そう思い、誠大に聞こうと横を見たら
誠大の表情がおかしかった
なにかに、怯えている?
それとも、警戒している?
そのまま、沈黙が少し続いたあと
1人の村人が声を上げた
「誰もいないなら俺が……」
「湊は、俺の家で世話になるよ」
「でもな」
「挨拶は、終わりでいいかな?
行こう、湊」
「あ、うん」
俺は、そのまま
誠大に手を引っ張られ
集会所を後にした
歩くのが早い
何かから逃げている?
それに、俺の腕を掴む力が強くなっている
だけど、今は声をかけられなそうだ
俺は、そのまま誠太の家まで戻った
家に入ったあとも
誠大は少し息を切らしていた
俺は、誠大の後ろで
立っていることしか出来なかった
しばらくして、誠大が口を開いた
「ごめん、引っ張って」
「いや、大丈夫」
「腕、痛かったよな」
まぁ、痛かったが
俺は、それよりも
「どうしたんだよ、そんな慌てて
村の人たちもなんか様子おかしかったし」
「……あのままだったら
あいつらに何されるか分からなかった」
「どういう」
「あいつら、湊を人間として見てなかった
本性を少し出してた」
それは、俺もわかった
人間として見られていなかったこと
言葉がおかしかったから
「……あまり、外に出ないようにしよう」
「え?」
「もしかしたら、バレてるかも」
「バレてるって?」
「湊が儀式のこと生贄のこと
この村の歴史を知っていることを
それを、俺が教えたことを」
「嘘だろ」
「まだ、確定はしてないけど」
どうやって、俺たちの話を聞いていたんだ?
窓は閉まっていたはずだし
大声で話していた訳でもない
「どうして、気づかれて……」
ボソッと誠大が言った言葉が聞こえた
2人とも、わかっていない
今は、3日目か
不安は消えるわけなく
一日をすごしている
ここには、陽の光があまり届かない
だから、今が何時かも分からない
時計がない
わかるのは、深夜と昼間だけ
それ以外は、分からない
「2週間、生きれるかな」
俺がつぶやくと
誠大は、優しい顔をして
「大丈夫、死ぬことは無い
だから、2週間何も知らないフリをして
家の中になるべくいれば多分大丈夫」
「多分って」
「ごめん、俺もわかんないんだ」
誠大は、申し訳なさそうな顔をしている
だけど、あの時
大丈夫と言った時の誠大の顔は
1番優しい顔をしていた
まるで、弟に言っているかのような
そんな、顔だった
しばらく、お互い何も話さず
ちんもくが続いた時
窓がガタガタと音を立て揺れた
俺は、少しびっくりしたが
風だろうと思うようにした
大丈夫と思いながら
確認のために窓に視線を向けると
黒い人影が見えた
だけど、人じゃない
形がおかしい
でかくて、体が欠けている?
なんだ、あいつ
怖い、おかしい奴がいる
絶対生きてない
俺の体が震えていた
そんな俺の前に
誠大が来る
そして、おれの目を見ながら
「絶対に見てはダメ
あれは、八尺様」
「やや、八尺様」
「大丈夫、動かないで
静かにしてれば」
今にも泣きそうだった
そんな俺を、誠大は
優しく包み込んでくれた
窓のガタガタ音が激しくなる
叩く音も聞こえる
俺は、誠大の腕の中で
目をつぶっていた
すると、何か聞こえた
八尺様の声だろうか
何か言っている
「あ、あ、あうあふ……い
いる……そ、こ」
いる?何がいる?
ここにいるのは、誠大と俺
もしかして、俺のことか
「……ここには、居ない」
「……い!る!い!むら!」
村?村に何かいるのか?
「いない!儀式はまだだ!」
「ぐぐ、せ、た」
お、収まった
静かになった
誠大は、ゆっくり俺から離れた
「大丈夫?」
「あ、うん」
「八尺様は見ちゃダメ
連れていかれるかもだから」
「どうして?儀式はまだ……」
「足りなんだきっと
最近は、ここに来る人もいない」
「……」
「また、来たら俺が追い払ってやるから」
「ありがとう」
誠大のことを信じたい気持ちもあるが
ほんとに信じていいのか分からない
誠大も、この村の人なんだよな
そして、俺はこれから
ほんとの恐怖を知ることになる




