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八尺村  作者: 榊みつば
16/17

16日目 真実

「何があったか話してみ?」

「えっと」


それから俺は

八尺村に行ったこと

村で起こったこと

誠大のこと

村人のこと

八尺様のこと全部話した

その間も矢地さんは

静かに聞いてくれた


「それは、大変だったねぇ」

「でも、最後は八尺様が助けてくれて」

「そうかいそうかい、それで君は

八尺村について調べて戻ると

約束したんじゃな」

「はい」

「そうじゃな、何から話せば良いのか

まずは、私も八尺村と関わりがあるんじゃ」

「迷い込んだことがあるのですか?」

「いや、私は八尺真衣とは

親戚のようなものじゃ」

「……へ?」

「親戚と言っても話したこともないんじゃがな

私は、あの村生まれじゃが

覚えておらんからな」

「それじゃあ、どうして村のことを」

「八尺家の親戚は全員村について

知識を持つことが決まりじゃった」

「なるほど」

「私の知ってること全部教えよう」

「ありがとうございます」


矢地さんは、1回小さく息を吐いてから

話は始めた


「八尺村は、最初は、いい村じゃった

みんなが家族で笑いが絶えなくて

でも、ある時村に遊びに来た若者が

この村がもっと良くなる儀式だと言いながら

八尺真衣を殺した

その時からじゃ、村がおかしくなったのは」


ここまでの話は

誠大に聞いた話と同じだ

話を聞いた俺は

やっぱり、本当だったんだと思った

矢地さんは、続けた


「儀式をしないと作物が育たぬ

村が壊れてしまうそう村人たちは言い始めて

八尺村には儀式や決まりが沢山できた

じゃが、そんな儀式ごときで何も変わらぬ」

「何も変わらない?」

「そうじゃ、村のための儀式じゃない

村人たちは、殺しの楽しさ

そして、肉の美味さに気づいた」

「肉の美味さ……」

「肉を調達するために儀式を装い

人を殺してきた」

「でも、八尺村で食事会をした時

肉が出てこなかった」

「それは、君が生きているからじゃ」

「……俺が食材」

「そうじゃ」

「村人達が死んだ理由は?」

「村が全焼したんじゃ」

「え……」

「生贄にされた人が抵抗して

みんな死んだ」

「そんな……」


初めて知った事実に

俺は、言葉が出なかった

酷い話だ

楽しむために自分たちのために

人を殺すなんて


「酷い話じゃろ」

「それなら、八尺様は」

「八尺様は、本当に神になったんじゃ

元々、村には別の神がおった

じゃが、真衣の気持ちが

大きかったんじゃろうか

いつの間にか入れ替わっておった」

「その、元々いた神様はどうなったんですか」

「多分、村のどこかにひっそりと

おるんじゃろうな」


もし、その神が

本当にいるんだったら

誠大に取り憑いたのは


「あの、元々いた神様って

幽霊とかに取り憑いたは?」

「幽霊は、どうかわからんが

人に取り憑くことはあるぞ」

「そうなんですか」

「なんじゃ?何かあったか?」

「えっと、誠大っていう子に取り憑いて」

「誠大……あぁ、あの子か」

「ご存知なんですか?」

「なんとなくじゃがな

先に、神について話そう

元々いた神は、とり様と呼ばれておった

名前の由来でもあるんじゃが

とり様は、人に取り憑かないと

姿を現すことができないんじゃ

話すこともじゃ」

「そうなんですね」


だから、誠大に取り憑いた

俺と話すためなのか

地下室に入ったことなのか

分からないが

いや、もしかして


「あの、とり様が祀られているのって

村の奥の小屋ですか?」

「おや、よく知っておるな」

「村人から逃げる時に

誠大とその小屋に行きました」

「そうじゃったか」


とり様は、俺が地下室に入ったから

怒ってたんだ

とり様にとって大事な場所なところに

知らなかったとはいえ

いけないことをしてしまったな


「次は、誠大くんのことじゃな」

「誠大は、俺を助けてくれました

でも、どうしてなんでしょうか

誠大は、儀式のために俺を村に連れ込んだ」

「それは、違う」

「違うんですか?」

「誠大くんは、何か知りたいことが

あったんじゃろ

それを知るために連れ込んだ」

「それで、何か知れたのでしょうか」

「今、調べておるじゃろ

村について」

「はい」

「それが、目的じゃ

村の存在を知ってもらい調べてもらう」

「そっか、自分ができないから」

「そうじゃ」


今、矢地さんから

聞いたら誠大の願いが叶う


「矢地さん、教えてください

誠大のことを」

「わかった」

「ありがとうございます」

「誠大くんは、八尺誠大と言う」

「八尺、誠大

八尺ってことは」

「そう、誠大の母親は八尺真衣じゃ」

「でも!誠大は、八尺様から逃げてた」

「誠大くんは、知らなかったんじゃろ」

「知らなかった?」

「八尺真衣が自分の母親だってことを

きっと、物心つくいた時には

真衣はおらず村人達が育てた」


その時俺は

誠大が村人達に逆らえない理由が

わかった気がした


「……八尺様は、覚えているのでしょうか

誠大のこと」

「それは、わからんな

でも、何か繋がりそうなことを

言っていたのなら覚えておるかもな」


繋がりそうなこと

何か、少しでもあっただろうか

俺は、八尺様との会話を

思い出していた

ふと、ひとつの言葉が

俺の頭に出てきた

八尺様は、よくせーたと言っていた

せーた?なんの意味があるんだ?


「どうしたんじゃ?」

「八尺様は、よくせーたと言ってました

この言葉にはどんな意味が」

「意味はわからんが

誰かの名前みたいじゃな」


名前、名前

誰の?あの場面で呼ぶのは

せーた、せーた、せいた、誠大!


「もしかしたら、誠大と呼んでいた」

「確かに、辻褄が合うな」

「ということは、八尺様は

誠大のことを覚えていたんですね」

「そうじゃな」


俺は、その事が嬉しかった

自分の事じゃないけど

真衣さんが自分の息子のことを

誠大のことを覚えていたんだ

その時、俺は八尺様と

初めてちゃんと話した時のことを

思い出した

あの時、誠大を助けると

俺は、約束していたんだ

そして、その方法は

俺が村のことを知り

誠大に伝えること

村のことがわかってきて

嬉しい半面ひとつの疑問が

俺の中に残っていた

残していても意味の無いことだ

矢地さんに聞いて

解消しよう


「あの、誠大はほかの村人と違って

生気がある目をしていたんです

でも、たまに生気が無くなる時もあって」

「それは、誠大くんが村人達より

後に死んだからじゃろう」

「後に?」

「そうじゃ、時間が経っていない分

人間の時の姿でいるんじゃ」

「じゃあ、もっと時間が経つと」

「村人たちと同じようになる

見た目も性格も」

「じゃあ、その前に助けなきゃ」

「そうじゃ」


もし、誠大を助けたら

村全体も良くなるのだろうか

たとえ、変わらなくても

俺のやることはひとつしかない

矢地さんの家を出る直前

俺は、一つだけ質問した


「誠大が本当に知りたいことって

なんだと思いますか?」

「なんじゃろうな、それは分からないな」

「そうですよね、でも、たくさん知ることが

出来ました」

「それは、良かった」

「ありがとうございます」

「また、いつでも遊びにおいで」

「はい」


俺が、背を向けた時

矢地さんは、ぼそっと


「本当に、自分がしたいことなのか

もう一度考えてみるんじゃよ」

と言った


俺は、矢地さんの家を後にし

来た道を戻った

家に着く頃には遅い時間になっていた

夜ご飯は、外で済ませた

お風呂に入り

そのまま、布団に倒れ込んで寝てしまった

次の日からは、普通に学校がある

村に行けるのはいつだろうか

そんなことを考えながら

学校生活を送っていた


久しぶりに図書館に行来ていた

特に読みたい本がある訳でもない

ただ、なんとなく来ただけ 

のんびりと、本を眺めていると

司書さんが俺を呼んだ


「矢地さんから、あなたに伝言があるの」

「伝言」

「えぇ、村のことを誠大に教えたら

村も誠大にも会えなくなるって」


村にも誠大にも会えなくなる

俺は、この言葉の意味が

よくわかっていなかった

確かに、俺は上京する

だから、会えなくなる

そんなことくらいわかっていた


「ありがとうございます

でも、俺の気持ちは変わらないです」

「そう、それなら何も言わないわ」

「また、来ます」

「いつでもいらっしゃい」


司書さんに頭を下げてから

俺は、図書館を出た

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