12日目 背中合わせの正しさ
朝ごはんを食べたあと
俺と誠大は静かに
お茶を飲んでいた
相変わらず誠大が入れる
お茶は飲みやすい
でも、今日は少し緊張していた
誠大にどう聞けば良かったのだろうか
どう聞けばいいのだろうか
そんなことを考えてしまう
シンプルに考えれば簡単なことなのに
どうして、幽霊なのにダメージ受けるのか
昨日聞いたことを
もう一度聞けばいいだけなのに
それが出来ない
はぁ……昨日の夜聞けばよかった
ビビって今日でいいと言ってしまった
重い空気が流れる
俺は、何度も口を開こうとしたが
声が出なかった
誠大は、ずっとお茶を飲んでいる
俺の気持ちに気づいているかのように
静かに待っていた
俺は、揺れ動く気持ちを抑えながら
昨日聞いたことをもう一度聞いた
声が震えていた
自分でも出した時に気づいた
誠大も気づいたのだろう
お茶を飲む手を止めて
静かにこちらを見ていた
その顔が俺は少し怖かった
昨日の顔が脳裏に出てくる
しばらくすると誠大が
ゆっくりと口を開けた
「昨日1晩考えてみたんだけど
俺にも分からないんだ」
「今までもあったんだろ」
「うん、あったけどその時も
どうしてか分からなかった」
「老人たちはどうなんだ?」
「大人たちが殴られてるところを
見たことがないから分からない」
「そうなのか」
「うん」
今の誠大の言い方からして
殴られているのは暴力を受けているのは
誠大だけってことになる
確かに、昔は体罰があったが
そんな頻繁にやるのか?
それに、誠大が分からないんじゃ
何も出来ない
そんな気持ちと
無駄だったとしても
もう少し聞いてみたら何か変わるかもしれない
そんな気持ちが半分あった
やっぱりこれ以上聞かないでおこう
そう思ったが
好奇心には逆らえなかった
「じゃあ、あの時気絶したのも
分からないのか」
「え?」
「え?」
「俺、気絶したの?」
「おう」
「全然覚えてない」
「あの時、地下室にいた時のこともか?」
「地下室なんていた?」
何がどうなっているんだ
なぜ、何も知らない
少しは、覚えてるものなんじゃ
いや、待てよ
あの時の誠大は別人のようだった
何かに取り憑かれたように見えた
そう考えると辻褄が合うのか
俺は、この話に深入りするのは
今は辞めようと思った
俺のためにも誠大のためにも
本能的にそう思ったのだろう
「いや、なんでもない」
「大丈夫?湊おかしいよ」
「大丈夫だ」
おかしいのは誠大の方だと思ったが
声に出すことは無かった
その時、地下室の死体のことを思い出した
迷ったが気になり聞くことにした
「あともうひとつ教えてくれ」
「なに?」
「俺は、地下室を見たんだ
そのことは、ごめん」
「う、うん」
「その地下室に死体があったのはなぜ?」
「……」
「誠大?」
「話してもいいか
見ちゃったみたいだし……」
「え?」
「双子が亡くなったら地下室に保存するんだ」
「保存」
「そう、そうすれば永久に幸せでいれる」
「そ、そうか」
俺は、地下室のこともあまり聞かないでおいた
また、誠大がおかしくなっても困るし
誠大も話したくなさそうだったから
そのあとは、あまり話すことは無かった
別に気まずいわけじゃなかった
ただ、何を話せば何を言えばいいのか
分からなかった
今までも同じようなことがあったのに
今回はなんだか違う気がする
俺が下を向いて黙っていると
誠大が突然つぶやいた
「もう少しでここから出れるね
やっと、近づいてきた」
「そう……だな」
嬉しいことのなずなのに
ずっと望んでいたことなのに
俺は、素直に喜べなかった
嬉しいその気持ちはある
けど、このまま出たら
俺は、もう一度誠大に会えるのだろうか
この村はどうなるのだろうか
誠大は、消えてしまうのだろうか
そう考えてしまった
初めて会った時から生きている人間じゃない
だから、消えても何も変わらない
そんなことはわかっていた
それでも、考えてしまう
俺は、おかしくなってしまったんだな
それとも、慣れてしまったのだろうか
誠大を心のどかで人間として見ている
そんな気がしていた
その時、小屋の外から声が聞こえた
この声は、呪いの道具を送ってきたじぃさん?
すると、誠大は身構えるように
膝立ちをした
俺は、段々と近づいてくる
声に耳を傾けた
そして、聞こえてきた声は
「湊くーん、どこにいるのかなぁ?
みーなとくーん家にいなかったねぇ
あの、邪魔虫誠大も一緒かなぁ」
家にいないことがバレたみたいだ
どうすればいいか分からず
誠大の方を見ると
何かをつぶやいていた
こっそり近づいて
聞いてみると
「早すぎる、ここに来るのが
どうして空き家も小細工をして
分かりづらくしたのに」
早すぎる
誠大は、ここがバレるのを予想してたのか
まぁ……そうか
今は、村全体が
俺たちの敵になっている
それでも、早すぎると言っていた
予想よりも早かった
一体、何人で探索してるんだ
さっき聞こえた声は1人だった
この村は広くはなさそうだった
だとしても、ここは奥の方だ
そんなことを考えていると
また、声が聞こえた
「誠大ぁ、八尺様に逆らうのかぁ?
消えるぞ消えるぞ八尺様が怒っている
湊を渡せ、生贄を生贄を渡せ!」
聞こえた声は
誠大を脅している言葉だった
俺は、早く逃げた方がいいと思い
誠大に早く行こうと言った
だが、誠大はここにいようと言い
譲らない
俺は、そんな誠大に少しイラついていた
ここにいると完全にバレたわけじゃない
動かない方がいいそんなことはわかっている
自分でもそう思っている
だけど、怖い
バレてないとはいえ
この辺はここしかない
誠大は、絶対に動こうとしなかった
俺は、誠大を引っ張って小屋を出た
誠大は、ずっと戻ろうと言っていたが
無視して走り続けた
とはいえ、俺は村のことは知らない
走りながら辺りを見渡して
途中にあった洞穴に入った
それと同時に小屋の方から
発狂する声が聞こえた
俺は、息を切らしていた
心臓がバクバクと音をたてている
手が震える
その間も誠大はどうしてとつぶやいていた
徐々に俺の息も整い始めた時
誠大が叫んだ
「どうして!どうして、飛び出したの!」
「ど、どうしてって」
「あそこにいたら安全だって
湊もわかってたでしょ!」
「そりゃ、わかってたけどあの辺は
何も無かっただろいつバレても
おかしくなかった」
「それでも、神の御加護が!」
その言葉を聞いた瞬間
俺の中で何かが切れた
「お前は!神を信用しすぎなんだよ!
神様なんて沢山いる!
この村はおかしいんだよ!
お前までおかしくなるのか!」
「なっ」
「もしかしたら、お前が気絶したのも
神のせいかもしれないんだ!」
「そんな、こと」
「俺にも分からないけど
お前は、時々別人のようになる」
「湊も俺を裏切るの?」
「は?」
「……もう、いいよ」
そういうと誠大はそっぽを向いてしまった
俺らしくもない
こんな、感情任せに怒鳴って
根拠もなんにもないことを
誠大のせいみたいに言って
俺は、馬鹿だ
「ごめんな」
そう一言言ったが
誠大からの返事はなかった
その日は、洞穴の中で過ごした




