入寮
夕方。
入寮のため、新入生たちが寮の前に集められていた。
重厚な石造りの建物は、学園本館とはまた違った落ち着きを持っていて、これから始まる生活を静かに受け入れてくれるようにも見える。
寮母が名簿を手に、淡々と読み上げた。
「305号室は……アリス・フェンリール嬢、リリア・アーデル嬢、そして――フィオナ・ルヴェール嬢」
その名を聞いた瞬間、胸の奥がふっと温かくなった。
(フィオナと……同室)
入学式の日に声をかけてくれた人。
まだ数日しか経っていないのに、不思議と安心できる相手だった。
人混みの向こうで、フィオナがこちらに気づき、上品に手を振る。
「リリィ。同じお部屋なのですね。わたくし、とても嬉しいですわ」
「わたしも。フィオナと一緒で、安心した」
そのやりとりを聞いていた隣の少女が、ぱっと目を丸くした。
「えっ、二人ってもう仲良し?
あたしだけ置いてかれてる感じなんだけど!」
明るい声に、思わず笑みがこぼれる。
「入学式で知り合ったの。すぐ気が合って」
「ええ。リリィは、とても話しやすい方ですもの」
少女はにっと笑って、勢いよく手を差し出してきた。
「じゃあ改めて!
あたしはアリス・フェンリール! 今日から三人暮らしだし、よろしくね!」
「よろしくね、アリス」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
こうして、三人の関係は自然に始まった。
305号室は、三人部屋にしては広く、
木の香りが残る新しい家具と、大きな窓が印象的な部屋だった。
窓の外には中庭の噴水が見え、夕陽が水面に反射してきらきらと揺れている。
「うわっ、広っ!
今日からここが、あたしたちの拠点だね!」
アリスが荷物を下ろすなり、ベッドに飛びつく。
フィオナは部屋を一通り見回してから、少し控えめにわたしへ声をかけた。
「リリィ。ベッド……わたくしの隣で、よろしいかしら」
「うん。そのほうが落ち着くから」
自然な流れで配置が決まり、
アリスも迷わず残りの一つを指さした。
「じゃ、あたしはここ!」
部屋の空気が、少しずつ“自分たちのもの”になっていく。
ひと段落すると、アリスが椅子に腰かけて言った。
「ね、改めて自己紹介しよ!
同室なんだし、ちゃんと知っときたい!」
「あたしはアリス・フェンリール!
魔法はちょっと苦手だけど、体術は得意だよ!」
「フィオナ・ルヴェールと申します。
光属性と補助魔法が専門ですわ。
お二人と同じお部屋になれて……とても嬉しいです」
「わたしはリリア・アーデル。
魔法は少し得意だけど、体力はあまりないから……その、助けてもらうこともあると思う」
「任せて!」
「ええ。支え合っていきましょう」
三人で笑い合い、
その空気はとても自然で、温かかった。
消灯後。
それぞれのベッドに横になり、天井を見上げる。
「……同室が二人とも優しくてさ。
あたし、ほんとラッキーだと思う」
「わたくしも……。
学園生活が、少し怖かったのですが……今は安心しています」
「わたしもだよ。
三人で、がんばろうね」
「うん! 今日から三人組だね!」
「ええ。どうぞよろしくね」
「よろしく」
こうして__
三人で過ごす、最初の夜が静かに始まった。
新キャラが登場し、今回は学園以外の場所。寮を書いてみました。
この三人のやりとりはなんだかほのぼのとしていて書いていてほんわかとした気持ちになりました。
感想などありましたら教えてください。とっても励みになります。
次回もお楽しみに!




