クラス分け試験
ミレーヌ様との一件も落ち着き、生徒たちもまばらに散る。
朝霧がまだ薄く学園の石畳を濡らしている頃、わたしは重厚な扉の前に立っていた。
魔法学園グランアテール、いよいよ本格的な学びの幕開けだ。
初日の今日は、クラス分け試験が行われる。
魔力制御の試験__それが、クラス分試験の課題だった。
入学式の華やかさは一瞬のこと。
ここからが、本当の勝負。
わたしが全属性を持つことは、入学試験のときにすでに知られている。
けれど、そのせいで、余計な注目も浴びた。
「全属性だって? でも平民なんでしょう?」
「属性が多くても、使いこなせなければ意味がないわよね」
そんな声が廊下のあちこちで聞こえてきた。
__いい。どう思われても。
見せれば、分かる。
静かに水晶の前に立ち、息を整える。
試験の要は“魔力の質”と“制御の精度”。
いくら派手に力を放っても、濁った魔力では評価されない。
わたしは、掌を水晶に向けた。
まずは、水。
静かな流れが、透明な青として水晶の中心に広がる。
続いて、火。
青の奥に、赤色の炎が差し込むように灯った。
その熱を包み込むように、風の魔力が循環を作り、そして光が全体を整える。
闇だけが最後に、すべてを静かに引き締めた。
__全属性が、ひとつの流れとして共存している。
「……え、今の……全部?」
「嘘でしょう、暴発しないなんて!」
ざわめきが広がる。
わたしは視線を上げずに、ただ魔力の流れを整えた。
色と光が重なり合い、やがて水晶は虹のように輝きを放つ。
試験官たちが息をのむ音がした。
「安定率、百……?」
「記録を超えている……!」
その声を聞いたとき、ようやく手を下ろした。
深く息を吐く。わたしの魔力は、暴れることなく完全に収まっている。
その瞬間、静かな拍手が響いた。
顔を上げると、視察席に座る王子__ユリウス殿下と目が合った。
殿下は一度だけゆっくりと頷き、穏やかな声で言った。
「見事だ、リリア・アーデル。属性の数に溺れず、すべてを一つに束ねる。その技は、まさしく王国の誇りだ。」
__王国の、誇り。
たった一言なのに、胸の奥が熱くなった。
平民だとか、貴族だとか、そんな区別の外にある言葉。
わたしは小さく頭を下げた。
「ありがとうございます、殿下。」
◇◇◇
試験終了後、学園内の掲示板には成績とクラスが発表される。
わたしは、最高ランクのSクラスに配属されていた。王族と有力貴族。そして、一部の優秀な生徒のみが配属されるクラスだ。
周囲の生徒たちの視線が一斉に集まる。
「さすがですね、リリア様」
声をかけてくれたのは、同じSクラスに配属されたフィオナ・ルヴェール。 研究者気質で、わたしが"平民で全属性という珍しい存在"だからと、最初から興味を持ってくれているのだ。
一方、ミレーヌの顔が険しくなっているのが視界の端で見えた。
今回もお楽しみいただけましたでしょうか?
クラス分け試験でのリリアを書く時、魔力の描写にこだわってみました……!
現実には存在しないからこその難しさがありましたが、だからこその楽しさもありました。
よろしければ、感想もお気軽にお寄せくださいね。
次回もお楽しみに!




