入学式
帝国魔法学園グランアテール。
その威容は、帝都の中心にそびえる城とは異なる"知の塔"だった。
石造りの尖塔群と、浮遊する魔導文様。
空を縫うように漂う結界の帯が、此処が帝国最高の機関であることを証明している。
わたし__リリア・アーデルは、今、その学舎の中庭に立っている。
(……わたしが、此処にいるのですね)
周囲にいるのは、貴族令嬢、軍人の家系、王族すらも含まれる「選ばれた者」たち。
でも、その中で首席合格という座に名を刻んだのは__この、わたし。
(わたしは、わたしの信念を必ずこの地で証明してみせる)
胸の中に秘めた決意。手を握りしめると、ぐっと顔を上げ、わたしは学舎の中へ一歩踏み出した。
百人近い新入生が、一糸乱れず整列する広間。
壇上には、学園長、生徒会長、魔法省高官、そして__帝国第一王子ユリウス殿下の姿。
「続いて、首席合格者による答辞__リリア・アーデル」
その名が読み上げられた瞬間、空気が揺れた。
「……アーデルって、商会の?」「え、平民じゃない?」「首席って、あの子……?」
誰かが口を押さえ、誰かが目を剥き、誰かが眉を顰める。
その中を、わたしは一歩ずつ進み、壇上へと上がる。
スカートの裾を捌く角度、背筋、視線の高さ。
グランシュ夫人に叩き込まれた社交作法を、今こそ正しく発揮する。
ざわめきの中に、わたしの声が響いた。
「新入生代表、リリア・アーデル。__本日、わたくしたちは、帝国最高の学び舎に、等しく足を踏み入れました」
視線が集まる。
一部の視線は刺すように、冷たい。
でも、怯まない。柔らかな微笑みを浮かべて、歌うように言葉を紡ぐ。
「出自、身分、家柄__それらが、魔法の才を定めるものではないと、わたくしは信じております」
あえて言った。
これを言えば、反感を買うと分かっていた。でも、言わなければ始まらない。
「わたくしは、知を学び、技を磨き__誇りを持って、この場に立ち続けます。平民であろうと、誰であろうと、それは同じはずです」
言い終えると、わずかに沈黙が走った。
数瞬後、最前列__ユリウス殿下がわずかに笑って拍手した。
それに引きずられる様に、形式的な拍手が広がる。
(……今のは、勝手な好奇心か、それとも……)
わからない。ただ、視線は確かに、わたしを正面から見ていた。
今回もお楽しみいただけたでしょうか?
いつもより、少し長くなってしまったかもしれません。
リリア、いよいよ入学しましたよ……!
読者の皆様と共に、わたしもリリアの物語を見守っていけたら、と思います。




