プロローグ
「……おめでとう、リリア。お前は本当に、たいした娘だよ」
そう言ってお父様はそっと封筒を差し出した。
白地に金糸で帝国の紋章が刺繍された、重厚な封筒。魔法省と王立学術局の二つの印章が押されている。
「……ありがとうございます。受け取ります、お父様」
わたしは両手でその封筒を丁寧に受け取った。震えそうになる指先に、ぐっと力を込めて抑える。
中に入っているのは、帝国魔法学園の正式な入学許可証と、わたしが首席で合格した証明書。
“平民”の娘が帝国難関の魔法学園に首席で合格した。
それは、帝都でも前代未聞の出来事だという。
しかも、わたしの魔法属性は__
(全属性。風・水・火・光・闇__すべて)
高位貴族の中にも滅多にいない、特別な素質。
それを平民の娘が持っているということで、審査会では何度も調査の「やり直し」を求められたらしい。
「正直、信じられんよ。貴族ばかりの中で首席合格。しかも全属性持ちとはな。あいつら、どんな顔をすることか……」
そう言って、お父様はわずかに笑った。けれど、その笑みには誇らしさと同時に、少しだけ不安の影も見えた。
「……大丈夫です、わたしは、やります。何処にいても、わたしはわたしですから」
静かに、けれど確かに。
わたしの胸の奥に燃えているものがある。それは、どんな布よりも繊細で、どんな糸よりも強い__誇りだ。
わたしは、服飾商アーデル商会の娘。平民として生きてきた。でも__
誰れにどう言われようと、わたしはこの手で証明してみせる。
帝都の空は、今日も高く、遠い。
如何でしたでしょうか。
拙い点多々ありますが、お楽しみいただけていたら、幸いです。
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