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第12話 【勅使河原 詩】は現状に満足していた

「ごめんね!僕...僕...そんなつもりじゃなくて!ごめんね!怖かったよね!」と、私を抱きしめながら彼はそう言った。


「...大丈夫だよ。私は」


「俺には...ららしかいないから...」


「うん。大丈夫。私にも...和也しかいないから」


 私は...気づいていなかった。

これがどういうことかを。



 ◇


「おはよ、詩ちゃん」


「うん、おはよ」


 クラスカースト最上位である安生さんからの告白を蹴って、私と付き合ったということでクラスからの風当たりはかなり強かった。


 安生さん自身が何か私たちにしてくることはない。

彼女はまさにギャルの化身のような見た目と性格をしていており、そういったみみっちい嫌がらせをするタイプではないようだ。


 しかし、周りは違う。

教室内で私と和也が話をしようものなら、睨みつけてくる女子たち。


 別に後悔はしていない。

それに私も和也も人前でイチャイチャするのが好きなタイプではないから、教室で喋らなくても問題はないのだ。


 さて...まずは何が起こって私たちが付き合うことになったのかを先に語っておこう。



 ◇



 私、勅使河原 詩は大人しい女子である。

基本的に目立つことはあまり好きではなく、ひっそりと人目に触れず生活をしたいタイプだ。



挿絵(By みてみん)


 恋愛にもあまり興味はないし、勉強もそんなに好きではない。


 何となく学校に行って、何となく友達と話して、何となく...生活する日々。


 そんなとある日のことだった。


 席替えにより私は窓側の一番後ろの席になった。


「よ、よろしく...勅使河原さん」


 隣の席になった男の子...佐山和也が少し緊張した面持ちで私にそう言った。


「...よろしく」と、適当に返事をした。


 すると、彼の隣の席...つまり私から二つ離れた席に彼女が現れる。


 クラスカースト1位の女の子、安生 五葉である。


 圧倒的なコミュ力と圧倒的な可愛さでクラスを席巻し、圧倒的な人気を誇っていた。


 まぁ、私とは対極に当たる人間...ということである。


「お、よろしくね!えっと...名前なんだっけ!」


「...佐山...和也です」


「佐山くんね!ね!それ何読んでるの?」


「えっと...ハムレットです」


「ハム?日ハム?」


「いや...シェイクスピアの...」


「ふーん。面白いの?どんな話?」


「父を殺された王子の...復讐の物語です」


「へー!そういうの好きなん?」


「...まぁ」と、明らかに絡まれて困惑している彼と、なぜか執拗に絡む安生さん。


 まぁ、別に私には関係ないし、助ける義理もないな。


 そう思いながら私は本を読み続ける。


 それからというもの、何故か執拗に絡み続ける彼に少し同情しながら、日々を送っていた。


 その流れが少し変わったのはそれから数日後のことだった。


 何やら上位カーストの女子たちが佐山くんを囲っていた。


「ね、その...こ、こ、こ、今度の土曜日なんだけど...ひ、暇だったりする?//」と、顔を赤くしながらそんなことを言い、言い終わると他の女子に抱きつく安生さん。


「...えっと...」と、言い淀んでいると他の女子が断ったら殺しそうな目で彼を見つめる。


「あっ、はい...大丈夫です」と、小さく返答する。


 すると、まるでうさぎのように飛び回る安生さん。


 それからというもの、後ろの黒板に相合傘が書かれ、そこには安生さんと佐山くんの名前が書かれていたり...。

ことあるごとに話しかける安生さん。


 しかし、佐山くんはどれだけの時が経っても最初の頃と変わらない、少し嫌そうな顔を続けているのだった。


 どう考えても脈なしなのだが、それでも彼女が諦めることがなかった。


「そ、の...こ、ここんど...お家に行ってもいい?」という安生さん。

その周りには相変わらず女子たちがいた。


 断ろうにも断れない雰囲気...。


「...えっと...」


 いい加減気づけよ。というか、本当に好きなら外堀を埋めるようなことや、断りづらい雰囲気でやるとか辞めればいいのに。


 少しずつ疲れた表情になって行く彼...。

流石に気の毒になった私は少しだけ助けることにした。


「...そうやって皆んなで集まって言われたら断りにくいでしょ。無理やりYesって言わせたいのか知らないけど、本人も嫌がってるみたいだし、辞めたら?」と言った。


 これでもマイルドに言ったつもりだったが、当然その瞬間矛先が全員私に向かう。


「は?何?誰?w」「いきなりなんなの?」と、言い始めた時「そ、そうだよね!ご、ごめんね!...佐山くん。それに...勅使河原さんも...ありがとう」と、安生さんが割って入ってくる。


 彼女自身、悪気があってやったことではないことは分かっている。

それゆえに、むず痒いというか...なんというか...それでも気づいてくれたならそれで良いのだ。


 その瞬間、チャイムが鳴り響き、女子たちが散って行く。


 すると、狭山くんがちらっとこっちを見て「...ありがとう、勅使河原さん...」と少しやつれた笑顔でそう言った。


 その瞬間、少しだけ安生さんの気持ちが分かった気がした。

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