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第23話 ランゼ VS. マザック

 やはり前回も鬱展開。しかし今回は…。

 一応今回は主人公が合流します。いや、これは合流とは違うのかも…。正しいところは本編にてご判断ください。

 月夜の闇に冷たい風が吹き抜ける。

 静寂の中に響くのは虫の音……ではなく虫の息たる少年と少女の声、そしてそれを見て狂喜する男の呵う声だ。

 彼の率いる兵達はただ固唾を呑み事の成り行きを恐る恐る見守っている。

 決して良いとは言えない価値観を持つ彼の機嫌を損ねれば、今足下に転がる者達に自分も仲間入りすることになろうことをその場の誰もが知っているからだ。


 地に血塗れで(たお)れ臥す少年ノブナガと少女ランゼにできることといえば、ただ彼を憎しみを込め睨みながら死に逝くことくらいだろう。


「……よくも…、よくも殿下にこのような真似をしてくれたわね」


 掠れる声を振り絞りランゼが怨嗟の言葉を投げた。

 だがそれは男にとってただの負け犬の遠吠えにさえ及ばぬものに過ぎはしない。


「ふんっ、(くたば)り損ないが何の戯れ言をほざくかと思えば。

 そんな状態で何かできると思っているとはあまりに惨めで哀れ過ぎて涙が出てくるというものだ。もちろん笑いの涙だがね。

 ああそうか、君は私を笑い死にさせようというのか。それなら確かに納得だ。

 く~くくくく…。はあ~ははははっ!」


 死に逝く者の怨み言も彼にはただただ滑稽なだけで、再び大声で狂ったように呵い始めた。


「そんなことなんてしないわよ。

 だってマザック、あなたを怨み、死を願う者は、あなたを殺そうとする者はっ、ここにっ、いくらでも居るのだからっ!」


 ただ死に逝くだけと思われたランゼは声を上げノブナガを背に立ち上がった。

 いや、それだけでなく、今まで地に臥せていたノブナガ付きの兵士達も次に次にと立ち上がり、その瞳に赤黒き光を宿らせて、そして武器を構えていく。


「なあっ⁈ 馬鹿なっ⁈ あれ程の激しい銃撃を受けてどうして無事でいられるのだっ⁈」


 目の前の光景に驚くマザックだが、しかし何に納得したのか直ちに兵達に再攻撃を命令する。


「いや、どうせただの痩せ我慢だ。ならばもう一度あれを喰らわせるだけだっ。

 者どもっ、殺れっ、殺ってしまえっ!」


 マザックの号令に配下の兵達の銃槍が火を噴く。

 だがランゼ達の方の兵士達も瞬時に集い、ランゼとその背後のノブナガを庇う壁となり立ち塞がる。


 激しい銃弾の嵐が壁となった兵士達の身体を蜂の巣にする。

 その放たれた銃弾は彼らの肉体を爆ぜさせて、腕を脚を頭部をと削り捥ぎ取り奪っていく。

 それでも彼らは倒れない。そして歩みも止まらない。


「ひいぃっ! なんであれで死なないんだよこいつらっ⁈

 これじゃまるでゾンビじゃないかっ!」


 ハンザが怯えて悲鳴を上げる。

 いや、それは彼だけでなく実際に銃撃を行なった兵士達の反応は同様もしくはそれ以上だ。


「あなた達、こうして私の秘密を見たからには一人残らず死んでもらうわ。

 まあそうでなくっても、殿下に傷をつけたからには生かしておく気はないんだけどね」


 ランゼが冷酷な笑みを浮かべる。

 それは正に無慈悲な死神の死刑宣告以上に殺意に満ちたものであった。


「征きなさいっ、怨讐の亡者達よっ!

 汝らの復讐を果たしなさいっ!」


 ランゼの下す号令に、黒く冷たい風が吹き荒れて怨霊と化し、大地からは亡者が生まれ出る。そしてそれらは群れをなし彼女の怨敵へと攻めかかる。


「まっ、まさか死霊術師かっ⁈

 ええい、ならば形残らぬまでに焼き払うまでだっ!

 火槍隊、前へっ!

 そして不浄なる者達を焼き払えっ!」


 対するマザックも衝撃を受けるものの、時間を置かずに立ち直り、そして適切な指示を出す。

 なんとも都合の好い話だが、元々この部隊は彼が最後に屋敷を焼き払うつもりで用意していたものである。そんな彼らをこのように使うことになったのはあくまでも偶然のことなのだ。

 因みに他の部隊としてはノブナガの火術対策として水を噴出する槍を用いる水槍隊も連れて来ている。



 ランゼ率いる死霊兵達とマザック率いる火槍隊の戦いは火槍隊の優勢に進んでいた。

 これは兵科の相性の問題とランゼの年齢による能力の限界による結果であった。


「ふ…ふふふふふ。全くガキのくせに脅かしおって。

 だが勝敗が決したからには最早これまで。後は散々に嬲って殺してやろう。

 くくくくく…。くはははははっ!」


 勝利を確信したマザックは例により高笑いを上げる。

 彼の目に狂いはなく、ランゼ側の敗北は濃厚であり、決着の時は迫りつつある。


 そんな中、突如として彼らの側面から激しい爆音が轟いた。


          ◆


「なんだ? いったい何が起きてんだ?

 もしかしてこれは戦争か?」


 娘であり女神だと名乗る幼女に連れられ監禁部屋からの脱出を果たしたケントは目の前の様子に唖然としていた。


「う~ん、よく解んないけど別にどうでもいいんじゃない?

 パパをあんな目に遭わせた連中なんてみんな酷い目に遭えばいいんだよ」


 年齢のせいなのかも知れないがなんとも物騒なことを言う幼女である。


「あっ、あいつはっ!」


 そんな中、憎き仇敵の姿を認めたケントは瞳に怒りの炎を宿らせた。

 だがその相手のマザックは武装した兵士達に護られており、いかに戦闘中といえどその隙を突いて仇討ちを行なうのはまず無理そうな状況がケントに冷静さを取り戻させた。


 とはいえど、そんなケントの心情に反し殺意を漲らせる存在がいた。


「あれってもしかしてパパを酷い目に遭わせたやつ?

 だったらお仕置きが必要だよねっ!」


「えっ?

 …って、おいっ、待てよっ!

 やめろっ! 馬鹿なことをするんじゃねえっ!」


 ケントの制止に耳を貸すこともなく幼女は戦闘の場へと飛び込んだ。


 そして激しい爆発がケントの目の前を容赦無用で吹き飛ばした。

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