7話
今日はアルノア城に向かう日。ここから数時間でつくらしい。思ったよりかは近い。早く向かって助けてあげなければならない。
そういえばリリーは昨日、軽く魔法の練習をしていたら転移というスキルを覚えた。これは一日に1回しか使えないらしく、かなり重要なスキルになりそうだ。一応リリーたちの一軒家に転移魔法陣を書いて、いつでも転移できるようにしておいた。
「リリー、時間だ。そろそろ行こう」
「わかったわ」
テオに声をかけられ、出発する時間になっていることに気が付かなかった。リリーは立ち上がり、テオと一緒にリアとフレイの元へ行く。4人は横一列に並んでお互いを見合い、頷く。
「ねぇ、皆。今回はいつも見たく簡単にはいかないと思う」
「大丈夫だ。俺たちは1人じゃない」
リリーの顔が強ばってるのに気付いたのかテオが背中をトントンとしてニコリと笑った。リアとフレイの方を見ると2人もニコニコと笑っていて今から魔族退治しに行くとは思えなかった。皆怖いはずなのに、リリーを勇気づけてくれた。みんなを見ていると本当に大丈夫だと思えてくる。きっと大丈夫。リリーたちは強い。
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リリーたちは森を歩き続けた。アルノア城にいる人たちを助けに行くために。あともう少しで着くはずだ。意外と一軒家からはそこまで遠くはない。暫く歩いていると、大きくて煌びやかな城がたっていた。ここがアルノア城だ。いよいよ魔族と戦うのだ。
魔族にも下位、中位、上位と分けられている。この間相手した魔族は下位だ。明らかに魔力の量が違う。ここを住処にしている魔族はどうやら上位らしい。ここまで魔力がビンビンと伝わってくる。
リリーたちは中へ入り、恐る恐る辺りを見合わす。中には誰もいない。どこへいるのだろうか。一同は顔を見合わせる。
「誰もいないですね〜。どこにいるのでしょうか」
「無事だといいですけど」
フレイとリアが緊張した顔で言う。だが、アルノア城にいる人だけでなく、魔族も見当たらない。あわよくばアルノア城にいる人たちだけ救出出来れば最悪いい。
向かいに階段がある。捜索がてら部屋を見廻ることにした。一同が階段を上ろうとした瞬間、あかりがついた。一斉に辺りを警戒する。それぞれ武器をかまえ、ゆっくり階段を上る。
「おやまぁ、これはこれはもしかして噂の勇者一同ですか? わたくしたち魔族を滅ぼしに来たのでしょうか」
声のするほうを見てみると、エルフのような耳に、黒い長髪、血のような真っ赤な瞳と血の気のない唇。女の魔族がいた。この世で1番と言っても過言ではないくらいの絶世の美女だった。しかし、敵は敵だ。やるしかない。今までの努力を無駄にはしたくない。
「……アルノア城にいた人たちは何処へやったの」
「あぁ、あの子たちのことかい? 地下牢に閉じ込めてやったわ。少し可愛がってあげただけであいつらと来たらチビりやがって、本当に人間は愉快だわ」
腹黒い笑みを浮かべている。許せない。人間をなんだと思っているのだ。こいつだけは絶対に倒す。
リリーは小さく口を開く。
「テオ、リア、私の補佐を。フレイは攻撃、防御付与した後にアルノア城の人達を救出、生存確認をお願い」
「「「了解」」」
皆リリーの指示を聞いた後、一斉に行動する。フレイは急いで地下牢へと向かう。
「おや、あんたたちみたいな小娘がわたくしに勝てるわけなかろう」
「お前だろそんなの。私たちが、じっくり調理してあげるわ。若作りおばさん」
リリーがニヤニヤして言うと、魔族は顔を真っ赤にした。挑発に乗りやすいタイプなようだ。
「おのれ、ふざけやがって」
魔族が手をふりかざす。その瞬間窓が一斉に割れ、ボール状になった。そして、リリーたちに勢いよく襲いかかる。
リリーは急いで魔法でバリアを貼る。次々と襲いかかってくるガラス。キリがない。
イライラしたリリーは新たに魔法を使い、ガラスを跳ね返した。ガラスは魔族に襲いかかる。ガラスが魔族の頬を掠った。魔族特有の紫色の血が流れる。
「……少し遊んでやろうかと思ったが、どうやら見くびっていたようだな。本気で行くとしよう」
魔族は気味の悪い笑みを浮かべ何やら弓のようなものを出す。真っ黒でどす黒い。弓を構えると、こちらへ飛ばす。
「リリーさん、避けて!!」
リアが叫びながらリリーの前に行く。そして急いで弓を構えて放つ。魔族の弓はリアの弓によって割られてしまった。
「……中々やりおるな。だが、この矢は毒が塗られておる。もう遅いのだ。この部屋は毒に侵されているのだ」
魔族は高笑いして説明する。だがしかし、毒が塗られているからやけに変な匂いがしたのか。魔法でもし、浄化出来たら。リリーは手を上にあげ、浄化魔法を放つ。やったことがないから成功するかは分からない。
少しずつ、毒で曇っていた空気が綺麗になっていくような気がした。みるみるうちに浄化が終わる。流石リリーだあっという間に毒を浄化してしまった。
浄化魔法は思ったより魔力を使うようだ。リリーは膝から崩れ落ちる。
テオは一気に跳躍すると、魔族に切り掛る。しかし、機嫌の悪い魔族はテオを思いっきり払い除ける。テオは背中から衝撃を受けた。今までに味わったことの無い痛みだ。魔族が強いのが分かる。
「テオ!!」
リリーが叫ぶ。リリーは急いでテオの元へ行き、治療する。みるみるうちにテオの怪我が治っていく。テオは痛みに耐えながらゆっくり体をおこす。今回も難なく行けるかとか思っていたが、倒すにはかなりの労力が必要みたいだ。
魔族はニヤニヤしながらゆっくりリリーたちに近づく。手には炎を無数作っていた。なんとなく察しが着く。バリアは貼っている余裕は無さそうだ。
「これでおしまいだ」
魔族は一言言うと、無数の炎を、こちらに放った。威力が強く、辺り一面は光に包まれる。




