5話
戦闘状況はやや不利だ。やはりイノシシとだけあり猪突猛進。攻撃の威力が強い。また、魔物としての性質だからか皮膚が硬い。テオも少し疲れてきたようだ。それならば魔法を使おう。水のボール状のものにイノシシを閉じ込めてそのすきに攻撃をしてもらおう。だが上手くいくのか。しかし、可能性に縋るしかない。やれるだけやってみよう。
リリーは水のボールを放つ。それを見たテオたちは一気にき攻撃を仕掛けた。急所に入ったみたいだ。イノシシ達は一気に倒れていく。
「上手くいったみたいね」
「リリー様さっすがぁー!」
とりあえずテントを移そう。もしかしたらまた魔物が潜んでるかもしれない。今度は結界と隠蔽のスキルを最大限に施そう。
リリーたちはテントを片付ける。だが、何かがおかしい。魔物は全部倒したはずだ。なのに何故、消滅していないのだろうか。普通ならば魔物は命が尽きると、消滅してしまう。しかしこの1匹だけは消滅しない。そんな時、魔物がグアアアアと叫び起き上がった。まずい、と思った時にはもう遅かった。
リリーの体を貫いたのだ。
貫かれた場所は腹部の左側。貫通している。テオは魔物に斬りかかりなんとか倒す。今度こそ消滅した。
リリーは倒れた。リリーはスキルが最強でも、油断禁物何だななどと余計な事を考えていた。
「リリー!!! リリー、大丈夫か!!」
「リリーさん!」
目が霞んできた。死ぬのかな。まだ魔王すら倒せてないのにこんなとこで死ねるかよクソなどと考えていたら、当たりが光り始めてきた。なんだか暖かい。
「リリー様を、こんなとこで死なせません!!! スキル! 治療!!」
光がどんどん大きくなってくる。リリーの腹部がどんどん治ってくる。光と光がバチン、バチンと傷を繋ぎ合わせていく感じだ。みるみるうちに塞がった。しかし、貫通した跡が残っている。仕方ないとはいえど女性の体に跡が残るのは少し宜しくない。
「う、テ、オ? フレイ、リア……」
「リリー様!! うぅ、良かったぁ」
フレイが涙する。リリーが目を覚めたのだ。しかし治療するとは言えど血は戻らない。顔色が悪い。とりあえず暫くは魔物退治は休まなければならない。早くアルノア城に行かなければならないのに。仕方あるまい。
とりあえず少し離れた場所にテントを張るため、リアにリリーを抱えてもらう。まだ真夜中の3時だが、歩くしかない。多分目的地に着く頃には朝方になっているだろう。一同は安全な場所に向けて歩く。
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リリーの顔はまだ真っ青で苦しそうだ。どんどん熱も上がってきた。目的地に着いたもののテントのものにあるものだけではどうしようも無さそうだ。どうしよう。
「俺がここに一軒家を建てる。俺のスキルで。必要なものも錬成する。半日もあればできるはずだ」
「テオさん、手伝います。フレイはリリーさんの面倒を見てて」
こうして2人は一軒家を建てることにした。みるみるうちに土台ができていく。流石建築スキルSだ。しっかり4人部屋にリビング、お風呂、トイレは各部屋に1個ずつ。シューズケースなどと生活には困らなさそうなものが出来てきた。そして台所、看病に必要なものをみるみるうちに完成させていく。
一軒家ができた頃にはお昼が過ぎていた。急いでリリーを部屋に連れていき、台所から水をくんで来る。水で濡らしたタオルをおでこに乗せる。まだ熱は下がらない。苦しそうだ。
皆で看病したがそろそろ眠気の限界も来ていた。皆リリーの部屋で寝てしまった。リリーも先程よりは穏やかな表情をしていた。
「ん……ここは、」
リリーが目を覚ました。3日間は眠っていた。リリーは辺りを見回したが覚えのない場所だった。ベッドから降りて部屋を出る。階段を降りるとテオがご飯を作っていた。
「リリー、起きたのか。良かった、目を覚まして……」
「ここ、どこ? 私どれくらい眠っていたの?」
「ここは俺とリアが作った家だ。リリーが魔物に襲われた時中々熱が覚めなくてテントじゃ不便だからスキルを使って作った。大体3日間くらい目が覚めなかった」
「3日間も……?」
リリーは驚いた。まさかこんなに眠っていると思わなかった。それにスキルを使ったといえどまさか2人でここまで完璧な家をたてるなど普通の並の人には出来ない。これは魔力が高く王子であるテオだからできたのだ。
だがしかし3日間も眠っていたなどアルノア城にいる人は大丈夫なのだろうか。一刻も早く助けに行かなければならないのに。しかしテオには最低でもあと一週間は休まなければならないと言われた。腹部を貫通し血が大量に失われたからその分休まなければならないとのことだ。不安は募る一方だが、仕方ない。
休んでる間適度に運動がしたいと言ったらテオが稽古をつけてくれるとのことだ。一週間も動けないのだったらとことん休んで稽古もして、しっかり魔物に対応できるように力をつけなければ。一週間もあれば強くなれる。とりあえず今日はしっかりご飯を食べて休むことにした。