19話
次の日、リリーは早起きをした。朝日が輝いている。窓をぼーっと見ながら体をゆっくり起こす。あぁ、魔物退治しなきゃ。逃れられない運命だった。ベッドから身を起こし立とうとすると何なら強い気配がした。瞬時にリリーはこれはまずいと思った。今までの魔物よりも何よりも強い気配がした。
リリーはゆっくり後ろを振り返る。汗が噴き出す。このままでは殺される、心がそう言っている。
後ろを振り返るとそこには美しく、この世の絶望、そう思わせるようななんとも例えがたい少年が立っていた。
「あ、あなた誰? どうやって入ってきたの、」
「俺の名はアスモデウス、魔王だ」
「ま、おう……?」
リリーは信じられなかった。こんな美しい少年が魔王だなんて。そして何故か分からないがリリーは魔王、もといアスモデウスから目を離せなかった。まるで好きな人といるかのような、目を引き込まれるような感情になった。
アスモデウスがゆっくりリリーに近づく。リリーは思わず後ずさりする。アスモデウスの目が急に開き、目が漆黒から赤のような、金のような不思議な目の色になった。瞬間リリーはその場から動けなくなった。
アスモデウスはリリーの頬を撫でる。触らないで欲しい、怖い離れてリリーは声に出そうとするが声が出ない。
「リリー、どうかしたか!」
テオの声がする。アスモデウスはテオの声に反応し舌打ちすると「また会おう」そう言って姿を消したのだ。
体が動けるようになった。リリーは思わずその場に座り込んでしまった。テオが部屋に入ってきた。
「大丈夫か! 何やらすごい気配したが、」
「……魔王が、魔王が来た」
「本当かそれは」
テオはリリーの頭を撫でる。リリーが想像以上に怖がっていたからだ。大丈夫そう言ってテオはリリーをだきしめて頭を撫でた。
「もう少し休め、出発は夜だから」
「うん……」
テオはリリーを抱き上げるとベッドに寝かせる。そして立ち去ろうとした。しかし、リリーはそれを引き止める。
「行かないで、まだ怖いの……」
「わかったそばにいるよ」
テオは椅子に座ってリリーの手を繋ぐ。だがしかしリリーをここまで怖がらせる魔王とは一体何者だろうか。スキルが最強のリリーですらあんなに怖がっていた。余程魔王が強いということなのだろうか。何あれともかく、リリーが無事でよかった。リリーが寝たらみんなに報告しよう。
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リリーが再び目を覚ますと外は暗かった。いつ間にこんなに時間が経っていたのだろうか。
「リリー、起きたのか」
声の方を向くとみんなそこにいた。みんながそこにいるそれだけで安心感が出た。
「リリーさん大丈夫です。僕たちがいます」
「ほら行くわよ次の目的地に」
「うん……いこう!」
あと少しで目的地へ着く。みんなとにかく歩いた。待っている、自分たちを必要としてくれてる人達が。やがてリリーたちは目的地へ着いた。着いたが、噂に聞いてるのとは大分違った。街が栄えている、と聞いていたが、そこは閑散としていた。
「あそこになにかいます!」
フレイが声を上げる。フレイが指さした方向を見るとそこには魔族がいた。今までの魔族とは違う、魔力の濃さが物語っていた。
「何やら虫けらがいるなぁ」
魔族がそう一言、呟いた。その瞬間無数の爆弾がこちらへやってきた。リリーとアイネは咄嗟にバリアをはる。しかし威力が強かった。呆気なくバリアは壊され皆吹っ飛んでしまった。
「ほう、私の爆弾をその程度までに威力を下げたか。ふむ、そこの獣人よ【来い】」
「はあ?? 誰か来いと言われて素直を行くんですか!」
フレイが声を荒らげる。しかしリアはゆっくり魔族の方向へ向かった。リア自身、信じられないそんな顔をしていた。
「リア!!??」
「体が、勝手に動いてしまいますどうすれば」
「ふむ、私の呪言は絶対服従やからのう」
リアは抵抗も虚しく魔族の前へ着いてしまう。魔族はニヤリとした。そしたらリアの腹部に剣を突き刺した。
皆息を飲む。どうすることも出来ない、というより行動を忘れてしまった。リアが倒れる。
「リア……? 、うそ、だよね? 嫌だよ嫌だいやああああ!!!!!!!!!」
フレイが叫ぶ。そしてフレイの莫大な魔力が辺りを包み込む。
フレイの魔力は綺麗だった。周りの瘴気は綺麗な空気に代わり、枯れていた草木は全て若返りまた花を咲く。そして皆の傷も癒えていった。フレイが顔をあげる。フレイの髪は白銀髪で美しかったが今は太陽の如く輝いており、瞳は水色から獄炎のような真っ赤で美しく変化していた。
《風よ汝の力を借りる。切り裂け》
恐らくエルフの言語なのだろう。リリーたちには聞き取れなかった。フレイがなにやら言った時何かが魔族の体を切り裂いていた。
《燃えよ》
そして今度は体が燃え始めた。
「熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!!!!!」
魔族が悶え始める。しかしそのかい虚しく魔族は灰になってしまった。
フレイの髪と瞳の色が戻った。そしてその場に倒れてしまった。




