17話
アイネは少し不服そうに舌打ちをする。それを見たフレイは満更でも無さそうにふふんと笑って、リアに「すごいでしょ!!!」と自慢をしている。リアは困ったように笑いそうですねと相槌を打った。
「……これで私には何も無くなった。私をあなた達の冒険に連れていきないよ」
アイネは少し照れくさそうに、小さく言う。一同は顔を見合わせる。そして少し考え込んだ。アイネ程莫大な魔力を持っている者が仲間になるのは嬉しい。しかしいいのだろうか。1度とはいえ元々魔族、魔王の仲間だったのだ。
「いいのかしら。アイネを仲間に入れて」
「俺はいいと思うぞ。リリーほどでは無いが、アイネは強い。そしてあの表情、何やら事情があるんだろう」
リリーとテオは会話する。リリーはテオの言葉を聞き考え込んだが、テオの言うことに従うことにした。テオは少し冷たそうに見えるが、冷静で正しい。
「わかったわ。私たちと一緒に行こう。魔王退治の旅は過酷だわ。それでもいいのなら」
「ええ、いいわ」
こうしてリリーたちの旅にアイネが加わることになった。4人だったのが今では6人に。とても心強いが、人数が増えれば増えるほど、危険が増える。不安だがきっと大丈夫。6人は歩き出した。
「あーあ、結局俺の実力見せる機会なかったな。しかし、フレイはすごいんだなあんなに魔力があるなんて」
「あっても宝物の持ち腐れですよー。どうせ使えないのだから」
少し寂しそうにフレイは言う。皆察して何も言わない。フレイの中で何かがあるのだろう。フレイが話してくれるまで何も聞かないのがいいのだろうきっと。
「ねえところでフレイヤ。あなたは何歳なの?」
「ええ……誰にも言わないでくださいよ。ゴニョニョ……」
「えぇぇ!?? ……確かにエルフと妖精は歳をとるのが遅いけど、あなたさすがに歳を取らなさすぎじゃない?」
「そういうアイネはいくつなの!」
「……私は……ゴニョニョ……」
「わか! 子供じゃないですか!」
「うるさいわね!」
フレイとアイネが何やら言っている。2人ともそこまで歳上なのだろうか。一見リリーたちより若く見えるが。まあ女の子だし、言いたくないのだろう。
「そろそろ行こうか。魔王退治の旅は長いわ」
✿.•¨•.¸¸.•¨•.¸¸❀✿❀.•¨•.¸¸.•¨•.✿
「アイネさん、なぜあなたは1度魔王の味方に?」
「話せば長くなるのだけれど、」
アイネはそう言って語り始めた。
アイネが住んでいるのは世界の端っこ、妖精が住むとされている都だった。そこには木々や花々、そしてたくさんの妖精がいた。そして平和にくらしていたのだ。アイネはそこで妖精の女王として都を統率していた。
しかし、平和はやがて終わりを告げた。魔王が直直に攻めてきたのだ。アイネは妖精達を避難させ、そして都を守るために戦った。しかし相手は魔王だ。いくら妖精の女王とはいえ、やがて魔王に敗れる。アイネは魔王の剣で右肩、右目、左腹部、左足を刺された。もう助からない。痛みも無くなっていた。
「ふむ、殺すのは勿体ないな。おい、お前生きたいか? 私ならお前を生き返らすことも出来る」
「……生き、た、い……」
「そうか。それには条件がある。お前、私の配下になれ。そして、魔族として生きるのだ」
意識が混乱しているアイネには魔王が何を言っているのか分からなかった。しかし、生きたい。なにかすれば生かしてくれる。意識が朧気になりながらアイネは小さく頷く。それを見た魔王は小さく笑いなにやらつぶやく。アイネの体はゆっくりと宙へ上がりみるみるうちに傷が癒えていく。しかしそれだけじゃなかった。髪の毛も、羽も全て黒くなっていたのだ。瞳は赤く変化していた。アイネはこうして魔族として生まれ変わった。そして意識が失っていた。
再び目が覚めるとそこには魔王退治しに来たリリー達がいたのだ。アイネには何をするべきか何となくわかっていた。魔王退治しに来たやつを排除し、魔王の企みを助ける。それがアイネの魔王により命令だったのだ。




