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16話

 リリーは何となく、朝早くに目が覚めた。あたりはまだ薄暗いが、リリーは中々寝付けなく起きることにした。欠伸をしながらテントから出るとそこにはマオが筋トレしていた。


「マオ、おはよう。朝早いのね」


「リリー! おはよう、やっぱり体が小さい分鍛えないとな」


 そう言ってマオは汗を拭いた。リリーはマオのために紅茶を沸かす。


「ありがとう。リリーはなんで魔王を倒す旅に出かけることにしたんだ?」


「んー、多分私以外に魔王と同等に戦える人がいないからかな」


 リリーは当時のことを思い出して薄く笑う。旅に出てもうどのくらいたったのだろうか。時の流れはあっという間だ。




 何時間かして皆が起き始めてきた。それぞれ挨拶を交わし、朝食をとる。フレイは徐に口を開いた。


「次の場所はこの先の森ですよね」


「確かその通りのはず」


 それに対してリアは頷く。暫くして目的地に着いた。森、と言う割にはここだけ木々が少なく、かろうじて生えていた草木は燃えたような、焼けたような跡があった。そして、真ん中だけ草が沢山生えていて、草の中には女の子がいた。女の子、というより妖精のような見た目をしている。しかし、普通の妖精とは違い、羽も、服も、髪も全て真っ黒だった。


 妖精と言えば、髪も羽も耳も肌も白く、瞳は輝く欲しいのような金色の瞳をしている。しかし彼女は一見妖精だが、見た目の色が悪魔、魔族と同じだった。


「だれ?」


 女の子が小さく、しかししっかり耳に届く鈴のような綺麗な声で聞いた。


「……ここに魔族がいると聞いた。それで退治しに来たの。あなたは無事? 大丈夫?」


 リリーが口を開く。少女は面倒くさそうに体を起こし、こちらを見据えた。


「そう、私を倒しに来たのね。勝負しようか」


「え、? 貴女がこの森に棲む魔族なのですか……?」


 少女の言葉に一同が驚く。そしてフレイが代表して少女に聞いた。


「言っとくけど、私は元妖精。そしてあなたたちより遥かに歳上なの。私を敬いなさい。私の名前はアイネ」


 元妖精で現魔族なんてそんなことがあるのだろうか。一体何があったのだろうか。しかし、リリーたちの目標は魔族及び魔王を倒すこと。元妖精だろうがなかろうが、倒すことには変わりない。


「私たちは負けませんよ。あ、ちなみに多分私の方が年上ですー!」


 フレイにしては強気な発言だ。しかし、フレイのその言葉のおかげでみんなは冷静になった。


「ふーん、あなたエルフなんだ。まあいいわ。勝負しようか。ルールは簡単、魔力量で勝負よ。負けた方が勝った方に従う、簡単でしょ?」


「……いいけど、一応俺たちこれでも国王に選ばれた者だ。簡単には負けないぞ」


 テオが呆れた様子で言う。だが、テオの言っていることは正しい。1番魔力の低いテオでも世界トップ50には入るくらいの魔力がある。ただ、妖精は魔法に特化した生き物だ。アイネに匹敵するのはリリーとフレイしか居ない。


「……俺魔力ないから観戦で」


 マオがぽつりと言う。リリーたちは驚いた。魔力がない人間なんてこの世界にはいない。全員扱えるかは置いておいて魔力は持っているはずだ。しかし、マオの事情が事情なので、何かあったのかもしれない。


「それじゃあ皆を代表して私が出ますねー」


「フレイ、大丈夫ですか? あなたは……」


「うん、魔法が使えないよ。治癒魔法と強化魔法以外ね。でもこれでもエルフなんだ。アイネ、私の名前はフレイヤ・エヴァ・ステラ・エイブリーだ」


「ふーん、エルフの支配者……王族なのね。そりゃあ自信があるわけだ。でも私の名前はアイネよ。妖精の女王だ。どちらが勝つのか楽しみね、妖精の女王か、エルフの支配者か」


「フレイが王族……支配者ってことはエルフを統率する者……?」


 リリーは驚きを隠せない。まさかフレイがそんなにすごい人だったなんて。いつものフレイは天然で、温厚だ。こんなに凛々しい姿をしている時なんて見たことがない。しかもミドルネームを話してなかった。ラストネームは知っていたが、そんな意味があるなんて知らなかった。


「それじゃあ始めようか」


 アイネがそう言った瞬間2人の周りに一気に魔力が浮遊し始めた。フレイがこんなに魔力を持っていただなんて。フレイの魔力はすごく綺麗で、美しく、莫大な魔力を持っていた。一方、アイネは妖精独特の魔力にどす黒いなにかがあり、そして計り知れない魔力を持っていた。しかしフレイの方が遥かに莫大な魔力だ。


「くっ、まさかこれほどに魔力を持っていたのか!」


「エルフは魔法に特化した妖精だ。私が魔法を使えなくても魔力くらいこの位はありますよ。それに一応王族なので」


 アイネが悔しそうな顔をする。そして膝を着く。


「……私の負けよ。仕方ないから従うわ。妖精の女王に二言はない」


「じゃあ魔族としての魔力を捨てて、妖精に戻りなさい」


 フレイが冷たく言う。フレイの言葉を聞いたアイネは仕方ないという風に手を上にかざした。そして声を出す。


 〖魔族としての魔力を捨て、妖精として生きることを決意した。元の姿に戻れ〗


 アイネの魔力からどす黒いなにかがゆっくり宙を舞い、消えていく。そしてアイネの姿が変わった。黒い髪は白くなり、瞳は赤と金色になった。羽も白く、服も白くなった。まさに妖精の女王にふさわしい姿だった。


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