1話
この世界にはスキルというものがある。スキルは冒険、職人、生活の3つに分かれており、この世界を成り立たせている。
17歳になったばかりの公爵令嬢である、リリアンナ・エレノア・シャーロットは教会に来ていた。スキルを計測するためだ。貴族は大抵3つのスキルからそれぞれ各1個ずつ賜れる。多い人で4から5個賜れる人もいる。
リリアンナことリリーは小さい頃から才能に溢れていた。生活スキルである、火の魔法、水の魔法などたったの3歳でやってのけた。両親である公爵と公爵夫人はとても驚いたそうだ。
そうこうしているうちに教会に着いた。いよいよリリーのスキルが分かるのだ。リリーは生活スキル、職人スキルがあればいいなと思っていた。何故ならば生活に困らないからだ。そもそもリリーは公爵令嬢。冒険スキルなどあまり必要としていない。生活にさえ困らないなら正直ほかはなんでもいい。最低限便利なら何も望まない。
「リリアンナ様、ようこそお越しくださいました。早速ですが、こちらの水晶に手をかざして頂きます。かざして頂くに当たっての注意点ですが、指に少しだけでいいので切り傷をつけ血を出してもらいます」
「わかりました」
リリーは頷いて、教会の人に手を差し出す。教会の人はリリーの人差し指に少し切り傷をつけた。合図をされて手を水晶にかざす。
水晶を中心に光っている。すると、上にスキルが乗っているステータスが出てきた。なんて書いてあるのだろう。
リリアンナ・エレノア・シャーロット、17歳。Lv:20、HP:2072、MP:4002。スキル:冒険▶︎ 弓S、剣A、魔法SSS、テイムSSS、危険察知A、拡大収納B、治療A、無詠唱、強化、格闘、威圧、催眠、調合、調毒、採取、隠蔽。
………こんなことがあって良いのだろうか。リリーは正直そこまでのスキルを望んでいなかった。なんならほぼというか冒険スキルしかない。しかも王国トップと言っても過言では無い程のスキル持ちだ。信じられない。驚きを隠せない。一旦落ち着こう。
「これはまさか……本当にすごい。リリアンナ様、これは王国トップクラスですよ!!」
「えぇ………そ、そんなことないと思いますわ」
苦笑いしか出てこない。何やら教会の中か慌ただしなってきた。ある者はコソコソと話し、ある者はなにやらメモしている。またどこかへいく者をいる。とにかく嫌な予感しかしない。
リリーはとりあえずお礼を言い、屋敷へ帰ることにした。
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今日はもう疲れた。リリーはベッドに身を任せた。瞼が重くなって来た。リリーは目を瞑り、そのまま寝てしまった。
気がついたら朝だった。小鳥のさえずり、朝日が窓から漏れてくる。リリーは小さく欠伸をするとベッドから起き上がった。メイドたちが着替え、髪のセットまで色々やってくれる。なんやかんや終え、朝食をとるため1回の食堂へと向かった。
そこには既に母と父が座っていた。相変わらず美しい母と厳格でかっこいい父だ。
「お母様、お父様おはようございます」
「おはよう、リリー。昨夜はよく寝れたかしら」
「おはよう、リリー」
「ええ、すっかりと寝れました」
挨拶を交わしていると、食事が運ばれた。今日の朝食はフルーツサンドにサラダ、コーンスープだった。どれもリリーの好物ばかりだ。
父の声の元、リリー達は手を組む。お祈りをするのだ。食事の前のお祈りは絶対に欠かせない。お祈りが終わるとそれぞれ食べ始める。
暫くして父がこちらを向いた。一体何かあったのだろうか。リリーは少し気構えると、父が口を開いた。
「リリー、話がある」
「なんでしょうか」
「今日の朝、招待状が来た。王族からだ。内容に関してはまだ言われてないが、朝食が終わったら支度をしなさい。すぐ出発をする」
「かしこまりました」
やはり、嫌な予感は当たった。大抵リリーの嫌な予感は昔から当たる。しかしわざわざ王家から招待状とはそこまでの程なのだろうか。たかが公爵令嬢のスキルがちょっと高いくらいだ。少しというかかなり不安だが、断る訳にも行かない。無礼にあたる。
朝食を食べ終えたリリーは急いで自室へ向かう。メイドにお願いし、この間新調したドレス、髪型は楽そうだったものを綺麗に整え、メイクも薄くする。
用意ができ、父に声をかける。父は頷き、2人で馬車へ乗る。
「いいか、リリー。基本的に挨拶とかは私がする。私の合図に従えば大丈夫だ」
「えぇ、分かりました」
馬車がゆっくりになり、止まった。いよいよ城に着いたのだ。案内と共にリリーと父は謁見の間に通された。
父もかなり厳格で、威厳があるが目の前にいる王様は比べ物にならなかった。この国の王であるクライブリト王。流石と言っていいのもだろうか。
お父様の合図と共にリリーは顔を下げる。なんというか、威圧感が半端ない。空気が凍りついている。王族とはこんなもんか。
「シャーロット公爵、公爵令嬢、顔を上げなさい」
王様が静かに言う。リリーと父はゆっくりと顔を上げる。厳格な父も珍しく緊張している。
「今回そなた達を呼んだのは理由がある。公爵令嬢には私の息子である第3王子であるテオドールと王国の最果てにある魔王城にいる魔王及び、その手下共を倒して頂きたい」
「魔王……ですか」
リリーは驚愕した。魔王など都市伝説に過ぎないと思っていた。よく物語では描かれているが、実際にいるとは思わなかった。
「既に仲間は手配しておる。王国最強である、そなたにお願いしたいのだ。リリアンナ・エレノア・シャーロット」
これはお願いという名の命令。リリーには断る権利がない。正直嫌だ、そんな重大な事。けどやるしかない。王様直々にお願いされてるのだから。リリーは口から出そうになるため息を飲み込み口を開く。
「かしこまりました。喜んでお受け致しますわ」
「そなたなら受けてくれると思った。それではそなたと旅をするメンバーを紹介しよう」
王様は鋭い目を細めて笑いながら手を振り上げる。その合図を見たメイド達がスっと動く。すると赤い瞳に銀髪の美しい男性、見た目が少し華奢な獣人の男性、リリーより少し背の高いエルフが王座の間に入ってきた。
「挨拶は後で皆でするといい。備品、必要なものは全て準備しといた。それではよろしく頼む」
こうしてリリーは第3王子であるテオドール、獣人、エルフと共に魔物退治の旅をすることになった。
新連載スタートしました。今回は全く書かない「異世界スキル系」です!
本当に書いたことがなく、初めて書くのでお手柔らかに………。
一応パートナーに添削、内容の相談をしたりしてかいております。