みんなで、生きよう〜True End〜
「つぅっ」
魔王城で魔王から秘宝を受け取った時、そんな情景が頭に流れてきた。今のはなんだ?秘宝が記録した未来を見せたのか?
「どうした、カイト。大丈夫か!?」
魔王が心配そうに尋ねてくる。
「悪い、秘宝が未来を見せてきた。それによるとどうやっても同じ結末を迎えるらしい。・・・なあ、この秘宝、未完成だって言ってたよな?」
「ああ、そうだ。こいつにはまだ力が溜まりきっていない。だからこそ、起動に天命を消費するのだ。力を貯めれば、何も消費せずに願いを叶えられるだろう」
「そうか・・・。だがそれに俺の力を与えれば同じ結末になってしまうな。どうすれば・・・」
「・・・なあ、カイトよ。儂のこの姿、実はまだ変えられるぞ」
そう言うと魔王は姿を変え、俺と同じような人型になった。
「この状態であれば力をほとんど使わずにすむ。しかしこの姿では上に立つ者としての力が十分ではなく、統率が取れない」
「だったらなんで変わったんだ?」
「分からないか?今の儂は力をほとんど使っていないのだ。恐らくこの力であれば秘宝を完成させられるだろう」
「だが、そうするとお前は魔王で居られなくなるんじゃないのか?」
「なに、そろそろ隠居しようと思っていたところだ。後身は既にいるからな。それにお恥ずかしい限りだが、これでも儂は魔族の中では若造でな。最近お忍びで街に出たさいに一目惚れをしてしまったようなのだ。しかしその人は淫魔でな、人型を好むそうなのだ」
「・・・いいのか?」
「ええい、さっさと決めてしまえ!儂はもう決めてるんだ、後は貴様が了承すればいいだけの話だ!なに、何も問題はない。儂は堂々と隠居できるし、ファリアにアタックも出来るのだ。一石二鳥とはまさにこのこと」
「・・・分かった。じゃあ力を込めてくれ」
「了解した。儂の力よ、余剰分を秘宝に移し、秘宝を完成させよ」
するとそれまで真っ赤だった秘宝が中心から段々と緑色に変わってゆく。そして全体が緑色になったとき、秘宝は一層輝きを増した。
「これで完成だ。カイト、早く行ってこい。きっと人々は貴様を待っているぞ」
「ああ、ありがとう。行ってくる!」
そう言って俺は魔王城を飛び出し、リランカ王国へ急いだ。
「・・・ふっ、まさか死を賭して闘った魔王に勇者が『ありがとう』とはな。人生何があるか分からんものだ」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺は謁見の間で秘宝に願う。
「秘宝よ、俺の仲間を、祖国を蘇らせてくれ!」
秘宝から眩い光が溢れる。あのときと違い俺の身体から力が抜けていく感覚は無く、俺は変化を全て見届けることができた。
「ん・・・あれ、あたし、生きて」
「エリ・・・」
「か、カイト・・・?なん、で」
「私、生きてるのですか?」
「モニカ・・・」
「カイト君?どうして」
「なんで俺、目が覚めてんだ?」
「ガスター」
「んぁ?はっ?なんでカイトがここにいんだ?」
「僕は死んだはずですが・・・」
「ケント」
「カイト?おかしい、こんな話は僕の知識にない。ああ、幻覚ですか。それともここがヴァルハラですか」
「現実だよ」
「カイトぉ・・・」
「カイト、生きてる・・・あったかい」
「急に抱きついてどうした、エリ。って、俺も人のこと言えないや」
俺の記憶に残り続ける、崩壊した王国に骨と化した仲間。それが今ではあの頃と同じく生きて、喋っている。
「カイト、泣いてる?」
「泣いてるよ。だって、俺だけ生き残って、辛かった」
「カイト君・・・」
「悪りぃ、カイト。寂しい思いさせちまったな。だがもう大丈夫だ!なぜなら俺たちは復活したからな!」
バシン!と俺の背中を叩くガスター。
「いってぇ!やったな、このぉ!」
「だはは、すまんすまん」
「全く、変わりませんね、あなたたちは」
「でもそれがいいじゃないですか」
「そうですね、ケント。やはりカイト君がいないと」
「あたしの夢、叶うかなあ?」
「それって、カイトのお嫁さムグッ」
「わあぁ〜!ダメダメぇ!」
「ん?俺がどうかしたか?」
「な、なんにもないよ!」
「そうか?」
勇者達は負のループを乗り越え、本当の結末に辿り着いた。それは誰も欠けることのない幸せで、ある少女の恋を実らせるチャンスでもあった。
彼らの見上げる空は青く、どこまでも澄んでいる。彼らはその空を見上げ、この空のもとに平和な暮らしを誓うのだった--。
〜True End〜
あと1話だけ、おまけとして続きます。