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色欲で金満なアルケミスト  作者: あやたか。
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プロローグ



 唐突だが、この世界にはダンジョンがある。

  例えるならば、よくあるローファンタジーの設定のあれだ。

  これは俺こと霧島梓霧島梓(きりしまあずさ)が錬金術を駆使し、失われた青春?を取り戻すお話だ。


 ダンジョンは俺が11歳の頃、世界中のあちこちに急遽出現した。

  人々の生活圏を軸に大型ショッピングモールやテーマパークなどに次々と出現し、人々を飲み込むようにダンジョンの生成が始まったのだった。


 ダンジョンが形成される瞬間、その範囲下にいた人はまるで神隠しにあったように消え去り、その代わりに残ったのは多量の禍々しい魔力を放つダンジョンだけだった。


 世界の三分の一を飲み込むほどのダンジョン大害によって多大なの犠牲者が出たため、世界各国のお偉いさんが急ピッチでダンジョンへの対策案を国連で採決し、できたのがダンジョン法案だった。


 当時はダンジョン災害により、世界の国土の三分の一が飲み込まれ、世界中が大パニックに陥り、各国は一時的に貿易を中断、世界各国が鎖国状態となり、発展途上国や食料自給率が低い国々では食料やエネルギー資源の枯渇が問題視され、生活必需品の価値が大暴騰するような悲劇が生じたのだった。


 そのため、富豪を除いた庶民には、生活を維持するのが困難なほどのインフレーションが起こり、どの家庭でも家族を養うので精一杯であり、邪魔者の梓になど居場所などはなかった。


 しかし、ダンジョンがくれたのは絶望だけではなかった。

  ダンジョン内にいるモンスターが落とす魔石は今まで人類が使用していた化石燃料を凌駕するほどのエネルギーを秘め、使用した後は微弱な魔力の粉となって消えるといった代物だったため、石油に代わる新たなエネルギーとして代用され始めたのだった。


 そのことがあり、国連が採決したダンジョン法案では魔石を国連が一定価格で買い取り、それを各国へ売り渡すといったエネルギーの平等化が実現され、世界各国にギルドが配置されるようになったのであった。


 そんな誰でも知っているようなダンジョン災害について高校一年の現代社会で習ったのを思い出しながら梓は、町の外れにある3時間おきに来るか来ないのかもわからないバス停で待ち続けていた。


 何も考えないでいるとダンジョン災害に飲み込まれた両親の悲鳴、親戚中をたらい回しにされ、ようやく引き取ってもらえた家族にされた酷い仕打ちの数々が脳裏をよぎった。


 三時間後、梓はようやく来たバスに乗りながら冒険者について事細かに調べていた。

  梓が成人を迎え、里子に出されていた家を追い出されてしまったため、梓は上京し、冒険者になって稼いでいこうと考えたのだ。


 「俺は冒険者になってレアスキルを手に入れて一生生活に困らないぐらい稼いでやるんだ!」


 そう決意し、梓はバスの中で久々の安息を得て、泥のように眠りについたのだった。


 「久しぶりの東京か...」


 時計は正午を回っていた。バスの中で調べた情報には冒険者になるためには冒険者ギルドで登録する必要があるみたいだった。


 高鳴る期待と高揚を顔に出さないように、梓は冒険者ギルドに入った。


 〜5年後〜


 ダンジョンができて12年、梓が23歳の頃、梓はDランクパーティの荷物持ちをしていた。


 それもそのはずだった。

  自分にはなんの才能もなかった。


 運動神経は中の中、先天的な冒険者としての才能は何一つ持ち合わせていなかった。

  冒険者は皆一人一つダンジョンに入った際、スキルを獲得することができる。


 例外に複数スキルをもらう人やレアスキルを授かるものも存在した。

 これらの複数スキル所持者のことを人々は「ギフテッド」と呼び、彼らはいつしかダンジョンの最前線で戦うほど、力を身に着けていた。


 しかし梓が授かったスキルは「忍耐力」ただのハズレスキルだった。


 「忍耐力」・・・自身の防御力を1.5倍する。己の忍耐力を少し高める。


 「これでどうやって戦えばいいんだ?」


 当時は魔法系のスキルや肉体強化系のスキルが強いとされており、こんなスキルを持っている梓をパーティに誘ってくれる人などおらず、もちろんソロでの活動を余儀なくされたのだった。


 一般的な冒険者はダンジョンでモンスターを倒し、モンスターが落とす魔石を売り、生活している。


 しかし梓の場合、ソロなのでどれだけ頑張ってもモンスターを倒すための攻撃力が足らず、モンスターを倒すのにも時間がかかり、レベルも上がらない、レベルが上がらないから攻撃力が上がらないと言ったスパイラルに陥ってしまった。


 それでも、冒険者になるため、上京してきた梓はレベルさえ上がれば、タンクとしてどこかのパーティに入れるかもしれないと淡い期待を持ち、一年、三年、五年、とレベル上げに勤しんできた。


 だが、どれだけ努力してもソロには限界が存在した。自分ひとりで頑張っても結局レベルはパーティを組む方が効率が良く上がり、後輩達に追い抜かされていく劣等感に苛まれながら、また、一人でダンジョンに潜るしかないのだ。


 こんな詰みかけている俺に微笑んでくれる女神はいないものかと梓の口からひとり事がこぼれ落ちた。



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