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8.生贄姫は旦那さまを鑑賞する。

絢爛豪華な調度品で飾られた会場、贅を凝らした美食と一級品の酒の数々、会場のBGMとして流れる音楽は国お抱えのオーケストラの生演奏。

お披露目は王家主催というだけあって大々的なものだった。

陰で死神と囁かれていてもテオドールはアルカナ王国の第3王子であり、第二騎士団の隊長だ。

当然と言えば当然なのだろうけれど、主要な貴族は全員出席しており、リーリエはテオドールと共に挨拶を受ける。

似たような賛辞、祝辞が延々と続く中、隣りにいるテオドールを盗み見る。

今日も変わらず顔面偏差値は高く、正装している分いつもよりさらに神々しい。


『テオ様は、やっぱり今日もかっこいいっ』


直接言うことはできないので、心の中で叫ぶ。


『打ち合わせ出来なかったから心配だったけど、ちゃんとリンクコーデになってる。みんなグッジョブ!』


平静を装っていたが、ジロジロ見過ぎたのかもしれない。


「……何か言いたいことでもあるのか?」


挨拶から解放され、テオドールにエスコートされ歩き出した時、隣から低い小さな声が落ちてきた。 

リーリエが隣をちらりと見やれば、不機嫌そうな青と金のオッドアイと視線が交わる。

眉間にはいつも以上に皺が寄っており、面倒だというオーラがひしひしと伝わってくる。 


「いえ、ただ妬けてしまうなぁと思っていただけなのですよ」


思っていた言葉とは違う回答が返ってきたからなのだろう。

テオドールが訝しげな視線を寄越す。


「今日も旦那さまは素敵ですね。会場中のご令嬢からの視線が痛いくらいです」


くすりとリーリエは笑顔をこぼし、小さな声量で答える。

この国で忌み嫌われる黒髪やオッドアイを持っていても、黙っていれば令嬢達から羨望や恋情のこもった視線を送られている。


「旦那さまのお隣を飾る花が私なのが申し訳ないくらいです」


あり得ない"もしも"を語るなら、彼が第1王子のように金糸の髪とアメジストのような目だったなら、きっと隣に居たのは自分ではなかっただろう。


「……この状況でよくそんな事が言えるな」


笑みを浮かべる事のない横顔は感情をほとんど表に出していなかったが、毒気を抜かれたような呆れた声がテオドールの心情を物語っていた。

テオドールの言っていることは理解できる。

会場内に溢れる幾つもの好奇や憐れみの視線に、本当はリーリエ自身も辟易している。

直接言われたわけではないので聞かなかったフリをして流してはいるが、聞いていて気持ちのいい言葉ではないものもいくつも耳にした。

だが、そんな事よりも。


「本心ですよ?それに、旦那さまがお側に居てくださる貴重な時間を楽しまないなんて勿体無いじゃありませんか」


普段騎士団の制服が多いテオドールの貴重な正装姿。前世のレアカードはついぞ出す事ができず嘆いた姿がすぐ隣にある。

気乗りしなかった夜会イベントだが、この姿を見れたことで昼からの怒涛の準備が報われた気がした。


「深窓の令嬢と聞いていたはずなんだが…お前、変わっているな」


普通の令嬢ならテオドールに近づくだけで気圧され、顔が真っ青になることもあるというのに、テオドールの隣にいて、様々な視線をうけ、晒し者になっている状況で、萎縮するでもなく堂々と笑ってみせるリーリエ。


「パッケージ詐欺ですね!よく言われます」


「パッケージ?なんだそれは」


「あーえっと、お気になさらず。要約すると私には旦那さまの威圧は効きませんよと言う事です」


うっかり出てしまった前世の単語をリーリエは笑顔で武装し、全力で誤魔化した。

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