ラビュリントスの王
もっともリアルなダンジョンファンタジー開幕!
現実世界に生まれたダンジョンやモンスターは今まで何作品もあったけど、現実世界で素直にダンジョンを攻略する作品は見なかった気がして執筆⋯
現実世界でありながらもやることは異世界のダンジョン攻略に沿って魔法なしのリアルなダンジョン攻略を描いています。
現実世界にダンジョンが浸透した世界で働く主人公を見守って欲しいです。
仁王立ちした猛牛は動く気配がなく、調査員の俺たちのアクション次第で殺戮の悪魔に変貌するだろう。
生成された初期配置にいるミノタウロスは嘘のような重厚感を携えている。どんなボディービルよりも太い筋肉質な上半身に、闘牛のように以上に発達した脚、何を思っているのか分からない牛の面も恐怖の対象だ。
持っている武器は誰も殺していない証拠に軽く刃こぼれした年代物なのが伺えるだけで血や脂の類はついていない。
「よかった、まだミノタウロスは行動を起こしていない。迷宮病患者は全員無事かもしれん⋯」
源さんあんた優しすぎるよ。ミノタウロスを見て第一声がそれじゃあいつか⋯。いや、よそう。数少ない俺のことを知り、俺が名前を呼ぶ人だ。この人には死んで欲しくないと本気で思う。
「どうしますか源さん」
マプ男が隣で見た目に似つかわしくないメンタルの強さを発揮している。小柄ながら何度も死地をくぐり抜け高精度のマップを届け続けたスペシャリストだ。彼には異常事態のはずのミノタウロスも想定していたかのように見えてしまう。
「そうだな⋯んー⋯。ミノタウロスは幸い真ん中の番線、恐らく7か8番線あたりにいるだろうしホーム向こうにあるB1か2階までの階段を目指す⋯。もしくはここで撤退するかだがどうする」
源さんは覗き込む体勢の俺にわざわざ聞いてくる。源さんが俺に聞く時はいつもそうだ、誰かを死なせる訳には行かないと引こうとする気持ちを振り切るためにわざわざ俺に聞く。
「まぁ⋯行くしかないんじゃないですか。運のいいことに線路が鉱石で埋まってないですしお堀みたいに上手く障害物になれば簡単には来れませんよ」
俺は引かない。何人犠牲を払っても、自分が死のうとも引かない。俺が怖いのは真宵が起きるまで妹の命をつなぎ止められないことだけだ。
今ここで引けば突入分の500万だけ、オマケに生活費と保険その他もろもろが引かれていき、終いには俺の業績が落ちる。一度浅いとこで引けばどんな理由があれ任務遂行困難としてランクを落とされる。
シルバーでは1回の探索で2桁万しか行かない。どう頑張ってもオーバーワークしなければ高額の延命装置と部屋は使い続けられない。
「俺だけでも行きますよ」
「勇⋯よし、目標はB1に降りるホーム反対の階段。マップを作りボスまでの通路とあとの危険因子を確認し次第離脱。討伐隊と交代するぞ」
(((こくり)))
「B1は支柱こそあれど広いといえば広い。接敵し次第隊列を組んで銃で応戦する。開けた場所では1度後退し、斜線を限定できる場所まで誘いこむぞ」
(((こくり)))
源さんの的確な指示がパーティに飛ぶ。B1に降りたあとのことまで指示することで、アクシデントが起きて駆け込んだ際に瓦解する可能性が低くなる。
頷き覚悟を決めたパーティは1歩また1歩とホームへ歩みを進める。
俺はまたなんだか嫌な予感を感じながらも、最後尾だから全員の不安が目に見えているせいだと自分に言い聞かせた。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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