調査講習
もっともリアルなダンジョンファンタジー開幕!
現実世界に生まれたダンジョンやモンスターは今まで何作品もあったけど、現実世界で素直にダンジョンを攻略する作品は見なかった気がして執筆⋯
現実世界でありながらもやることは異世界のダンジョン攻略に沿って魔法なしのリアルなダンジョン攻略を描いています。
現実世界にダンジョンが浸透した世界で働く主人公を見守って欲しいです。
「よし、勇も起きたし時間も頃合だ。始めようか」
いい体格で短髪がより強面を強調している源さんが音頭を取る。歴戦の風貌には数々の現場を体験した物にしかつかないような細かい傷跡がある。それが似合うのだから相当なオーラだ。
音頭をとった時刻は10時。これから夕方近くまで合わせて6限分の講習がある。自動車免許の更新講習のようなもので簡単な確認事項と健康診断を兼ねたものだ。
今日集められたのは上から二番目のゴールド免許の調査員のみ、ランクが変われば講習内容も変わる。授業のような内容はゴールドではすぐ終わり、一人でも多く仲間と討伐隊を生かすために知恵を交換する。
トップの数人しかいないプラチナともなると、世界を飛び回ってダンジョンを攻略するそうだ。ここにいる30数名は日本クラスだがプラチナになれば年収の桁がひとつ増える。真宵を良い環境で寝かせてやるためにも早くランクを上げたいものだ。
「さてと、毎年恒例でゴールド調査員の講習を持った波輪 源太郎だ。皆知っているだろうが午前は恒例でダンジョンの成り立ちを話さなきゃいけない。もう聞き飽きただろうがルールだから少しだけ耳を傾けていてくれ」
そんな夢を考えている間に講習が始まりそうだ。
大手調査会社所属でゴールドの源さんが社員を集めてわざわざ講習を開いて、規定通りに講習を進める。
俺より一回り歳が行ってるにも関わらず元気な高齢者だ、髪は白髪も混ざり始めているくせにその体躯は未だ現役のものだ。
俺たち調査員は免許が無ければダンジョンで仕事をすることは叶わない。だからまどろっこしくても全員がこの講習に参加する。方耳を傾けながら俺も察しに目を落として勝手に読み進めていく。
「まずダンジョンの成り立ちだが、どこからきて何から生まれたのかは未だに解明されていない。突如として現れた建造物やもとある建造物、土地を使ったダンジョンまで幅広いものがある」
2032年代から突如としてポツポツ現れ始めたダンジョン。大きさはそれぞれで日本で最大のものだと富士の樹海を丸ごと飲み込んだものもある。
「そして未知の物質で形成されたダンジョンから産出される物質は私たち人類に恩恵と公害をもたらした」
ダンジョンが生成される際に壁が所々鉱物で薄く覆われるのだが、その鉱物がまた軽くて加工しやすく、丈夫という三拍子そなえた超合金だったらしい。
ネットで転がっている程度しか俺も知らないが、どこの企業もダンジョンの入口付近で鉱物を漁り研究を大きく飛躍させた。
AIは完全に生活に浸透し、不足していた資源は全て賄われ、人間の仕事はどんどんと減っていった。
かく言う俺も大学をわざわざ4年も行ったにも関わらず卒業した2035年頃にはダンジョンの調査は3年分進んでしまい、もう俺が大学卒で入れるような人間の仕事はほとんど残っていなかった。
しかし俺には金を稼げる仕事がすぐに必要だったため、ダンジョンに関連する仕事に片っ端から応募したが受かったのは調査会社の下請けだった。
「ダンジョンは様々な企業を成長させ人類の研究を数十年分進めた変わりに、迷宮病という公害を発生させた。迷宮病は罹患者の意識と成長を閉じ込めてしまったかのように時を止める病気だ。ダンジョン生成時、一定範囲内にいた場合罹患率がとても高くなる」
そう俺の妹、鳴宮 真宵は夢で見た通りであの時出現したダンジョンの空気にやられて迷宮病に罹患した。出現した瞬間が一番迷宮病罹患率が高いらしく、出現時にその場に居合わせなかった俺は今でも元気に妹の延命治療代を稼いでいる。
真宵は15のこれから高校生って時に迷宮病にかかった。ダンジョンが少しづつ認知されていたのに自分たちの町の近くに生成されることは無いとタカをくくっていた。
生成前に予兆のようなものはなく、気づいたらもうダンジョンが生まれる。迷宮病はダンジョンが生まれる数だけ罹患者が増え、未だに解決方法は見つからずにいる。
「だから私たちがいる。企業が使っている鉱物はほんの入口のものだ。私たちが調査し、討伐隊がダンジョンボスを討伐すれば迷宮病完治へのヒントがあるかもしれない。少なくとも日本は大きく経済成長をとげる!」
「源さん⋯ダンジョン調査の立場を強くすることしか頭にないくせに」
ドッ!!
ゴールドにもなれば周りは見知った顔ばかりだ。必然と中身をよく知る人間ばかりになりこういったいじりも生まれる。
「当たり前だろうが。ダンジョン調査の立場が強くなれば危険なダンジョンに先頭切って突入するお前らにもう少しいい生活させてやれるだろ」
「源さん⋯」
「俺らのことを⋯」
「さすがだぜ源さん! いつも指揮頼りねぇけど!」
「頼りないは余計だ!」
むさ苦しい男どもが古株の源さんをよいしょする。女性調査員がいないからこそのノリだろう。我先に危険に突入する調査員は収入の割に不人気職だ。
金よりも命の常人はまずならない。
そんな他愛ない話をしていたら源さんの電話がなる。
「すまん、あいもしもし、波輪です。⋯本当ですか、はい分かりました。すぐに⋯。よしお前ら、ここからはビジネスの話だ」
ほら、金の話で男どもの目付きが変わった。
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