B1
もっともリアルなダンジョンファンタジー開幕!
現実世界に生まれたダンジョンやモンスターは今まで何作品もあったけど、現実世界で素直にダンジョンを攻略する作品は見なかった気がして執筆⋯
現実世界でありながらもやることは異世界のダンジョン攻略に沿って魔法なしのリアルなダンジョン攻略を描いています。
現実世界にダンジョンが浸透した世界で働く主人公を見守って欲しいです。
「おっし、えぇ面になってきたな。B1向かおか」
「それにしても何でB1なんだ」
「いつものキレがないやんけ勇。B1で銃声が鳴り響いたあと、お前の叫び声で牛が来た。つまり、下のやつらは牛を一時的に追い払ったちゅうこった」
「俺の叫び声に釣られたとして、俺が向かえばマプ男あたりが危なくなるそ」
「それなら今まけてるから大人しゅうしとけばしばらく2階にいてくれるはずや。マプ男たちと合流して銃が効いたかとか、相手のアクションが確認できる」
「どっちみちマイナスは無いのか⋯分かった行こう」
「ダンジョン製の鉛弾ぶち込んだろや」
「鉱石だけどな」
B1を目指す理由もこの状況では充分だ。何も無く下を目指すなら止めようと思ったが、耳が効くか弾が効いたかの二択を確認できるのはでかいかもしれない。
「ミノタウロスって男しかいないはずだし玉に弾ぶち込むか」
「それめっちゃえぇなぁ。二度と女抱けんくしちゃるわ」
2人でしょうもないことを言いながら雰囲気を明るくする。まだ完全に吹っ切れた訳では無いが、ダンジョンに10年潜った経験が俺の感情の扉を閉じた。
目を開いて八木の顔を見たかと思えば今度は心を閉ざす。まるでモグラ叩きだ。
B1の生け贄メンバーの顔までは見られないだろう、それでも声くらいは耳を傾けよう。俺はそんなことを思いながら八木と言葉を交わしてホームを歩いた。
ミノタウロスが追ってくる気配もなくホーム反対の階段にたどり着く。話し声に吊られないので耳は牛ほど良くないのかもしれない。
「こんかったな。まぁこられても困るんやけど」
「来たら死ぬだけだったのにな」
「まだ何かルールがあるんかな」
一番危惧しなければならないのはダンジョン、ミノタウロスのどちらかにまだ何かがあること。
初めにギミックがミノタウロス自体が動くことだと勘違いしていたように、今確認できているラヒュリントスだけでギミックが終わらない可能性がある。これはミノタウロスの神話を詳しく知らないせいで生まれた不安要素だ。
しかしそんなことを考える暇は正直ない。ある情報を繋ぎ合わせて逃げ道を探すしかない。
「おっしゃ、そろそろB1や。まずは誰かと会わんとな」
「B1はコの字上に繋がってる、追い込まれたら一度1階のホームを経由しなければ逃げられない」
「ホームで会わなかったちゅうことは全滅か隠れてるかか⋯」
新宿駅が迷路と言われる由縁は改札が難しいことくらいで、実は道としてはたいして難しくない。実際歩き回ると難しく感じるが地図が頭に入っている調査員からしたら充分動き回れるレベルだ。
俺たちが降りた西改札側からだと、中央西改札に向かって一本道、改札を出れば建物を挟みながらT字状の道がある。
確かめるべき最優先はこのダンジョンのルールだ。俺はトランシーバーを取り出し田中さんに声をかける。
「田中さん、生きてるか?」
「ザザ⋯鳴宮⋯?まだ生きてるよ」
鉱石におおわれているからか少し電波が安定しない。しかし声が聞き取れないほどでもなく、話のほとんどは理解できそうだ。
「マプ男はどうしました?」
「⋯死んだよ⋯ガガ⋯殺られて、交戦したが歯が⋯ザザザザかった」
「さっきの銃声はマプ男のか」
「この銃も正面からじゃ使えんかぁ。弾も少ないし隊列も組めなきゃ使い道なさそうやな」
銃が効かないというマプ男の残した最悪の情報を受け取り、俺たちはまた動きを考えなければならない。
今後のことを頭でめぐらせようとした時、田中さんがもう一言付け足した。
「ザザ⋯気をつけろ、ここは地獄だった⋯ガガガ、牛はザザ⋯た。俺はもう無理だ⋯ザザ⋯頑張れよ」
タタタァン
少し離れた場所で銃声がなる。田中さんが自決した。恐らくマプ男が目の前で殺され、順番に殺されていく生け贄を眺める間に精神が壊れたのだろう。アサルトライフルだからか力んだ拍子に数発出たのが妙に生々しい。
「田中さん? 牛がなんだ! 田中さん!」
「無駄やろ。俺ら調査員が死ねん自殺するわけないわ。もう繋がらへん」
「くそっ⋯」
「牛が〇〇た」、せめて「た」の前が分かれば考察もできるが、これだけでは考えても無駄だろう。
「俺たちの知らない何かを牛ができることは確定だ。頭の片隅において外に出る方法を探そう」
「それしかないわなぁ」
俺と八木は警戒しながらまた歩き始めた。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
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