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日常の破壊者  作者: ファミ・ローⅦ世
2nd~破壊の模倣~
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85/202

神奈川編Ⅱ・ゲームセット~感電~

埼玉県所沢市

ヴェルク下山口店

駐車場

大東は待ち合わせ場所である埼玉県内で展開するスーパー、ヴェルク下山口店にやってきた。

目印は今は無きコンビニチェーン、ツーエフの手提げ袋で、紺の生地に月と星のキャラクターが踊っているようなデザインになっている。

それは一目ですぐにわかり、待ち合わせの相手―生山がそこにいた。

ツーエフの元オーナーからすれば、この手提げ袋は非常にわかりやすく、見ず知らずの相手との待ち合わせとしてはうってつけの物であった。

SNSで連絡を取り合っている時に実家の稼業であったタバコ屋が立ち退いた際、タバコ屋の跡地に作られたコンビニーツーエフの本部から粗品としてもらったものだったと話していた。


「・・・ELICエリックさんですか?」


生山がSNS上で使っているハンドルネームである"ELIC"で呼びかけると「あぁ・・・!」と生山も大東が誰であるかを認識した。


「EAST OWNER2(イーストオーナー)さんですね。お待ちしておりました」


と生山も大東のハンドルネームである"EAST OWNER2"で大東の事を呼び、互いに待ち合わせていた人物である事を認識した。

そして、大東は生山に店での使い古しであるツーエフの紙袋を渡した。

中身はカステラの箱に入れて偽装したガソリンが入ったアルミが巻かれた500mlのペットボトルが5個も入っていた。


「確かに受け取りました」


爆弾の材料となるガソリンを受け取った生山は大東に別れを告げて、駐車場を後にしようとした。

その時、大東の肩を誰かが叩いた。


「・・・店内保安の者です。その紙袋の中身を見せていただけますか?」


大東が振り返るとそこには親子ほどの年の離れた2人組―遍路とミツキがいた。

遍路とミツキはすぐに警察手帳を見せると、警察である事を知った大東はすぐに逃げ出そうとした。

だが、遍路は大東を取り押さえ、生山はすぐにダッシュで駐車場から逃げようとした。

それをミツキが追跡し始め、生山は車道へ出ようとした車に阻まれ、あっさりと追い付いつかれて取り押さえられた。


「手配中の大東と生山、両名を下山口のスーパーマーケットで確保。繰り返す。大東と生山、両名を確保した」


『了解。これより所轄署の応援を送る』


ミツキは無線で大東と生山を逮捕したことを伝える。

遍路とミツキの耳に付けている無線のイヤホンから埼玉県警本部より応援が管轄となる所沢山口署から捜査員が来ることが伝えられた。

そして、遍路が大東に改めて手錠をかけた時、大東は持っていたスタンガンを自分の手にかけられている手錠に当てた。


「・・・いっ!!」


手錠を通じて伝わった感電による痛みに驚いた遍路は一瞬、何が起きたかわからなかったが、うっかり大東を放してしまった。

そして、生山に手錠をかけたばかりのミツキを大東は蹴り、生山はその隙に駐車場から逃げ出した。


「至急!至急!緊急事態発生!先ほど確保した大東の抵抗により捜査員1名が負傷!大東、生山、両名が脱走。下山口駅方面へと向かったと思われる・・・」


ミツキは自分でこの無線を飛ばさなければいけないことに悔しさが溢れてきて、駐車場に駐車している車に自分の拳を叩きつけた。

あまりの悔しさに涙まで溢れてきてその場に崩れ落ちた。

そのミツキの肩を叩き、「よくやった・・・」と遍路は声をかけた。

―――――――――――――――――


30分前。

北朝霞にはいない事がわかり、ミツキの筋読みは空振りとなった。

しかし、西所沢と所沢を結ぶ南所沢ではないか、という線で可能性が浮上していた。

その読みは当たり、生山は南所沢に潜伏していたのだった。

当然のことながら、遠回りになる事がどうしても引っかかったが、遍路はすぐにピンときていた。

そして、遍路はタバコを咥えると火をつけた。


「生山の狙いは、埼武レオンズの試合だな。加えて今日はオーソンのイベントもあるそうだ」


「えっ?そうなんですか?しかも、オーソンとくれば、大東も動機がありますよね。2人して埼武ドーム前駅に行くってことですか?」


「イベントとあれば、警備員も増員しているはずだし、今回のテロの件も警備会社に伝わっているはず。東京でのテロでは人が多い時間帯に爆弾を仕掛けたそうだが、あの2人にそんな大胆な犯行はできないはずだ」


「えぇ?・・・でも、これまでしっかり監視カメラに残るぐらい2人とも爆弾を仕掛けて逃げてるじゃないですか?」


「"逃げている"から"捕まりたくないんだ"。方やコンビニのオーナー、方やスーパーの店長だった男だ。これ以上にリスクを負うつもりはないだろう」


「じゃあ、他で落ち合うってことですか?」


「そういうことだ。恐らくは・・・下山口のスーパー。あっちには大きな駐車場がある。そこに大東も向かうはず」


「その、大東はすでに下山口にいるって事ですか?」


「逆だ。埼玉の土地勘のある生山の方が先にいる可能性がある。で、神奈川出身の大東はスーパーに辿り着くまでに時間がかかるはず」


「なるほど・・・あの、でしたら、電車に乗って追いませんか?・・・」


ミツキの提案に一瞬、戸惑うも遍路はタバコを消して「わかった。やってみよう」と森田の提案を受け入れて、2人はすぐに近くの埼武鉄道の駅である北朝霞駅から電車に乗って下山口駅へと向かった。

その電車内で2人は大東の姿を発見し、生山に接触するまで尾行をしていたのだった。

―――――――――――――――――――――――


すぐに下山口から埼武ドーム周辺などに厳戒態勢が敷かれ、ヴェルク下山口店には管轄となる所沢山口署の捜査員が駆け付けていた。

駐車場内の監視カメラをチェックし、それを関東全域の捜査員に共有を図るようだった。

重大事件の犯人を取り逃がすという失態を犯した2人には冷たい視線が送られていたものの、これ以上、逃がすつもりはないという目標は定まっていたようだ。

しばらくして県警本部から所と大園も駆け付けた。


「やっちまったなァ!!」


所は開口一番、ニヤニヤしながら遍路とミツキの失態をイジる。

反撃とばかりに「うるせぇよ」と所を小突くと、捜査の状況を訊き出す。


「あんたらがやっちまったせいで、埼玉と神奈川、両方の現地対策本部はぬか喜びだそうだ。とは言え、テロを防げたことに関しては公安の連中が褒めてたぞ」


「公安からすると逃がそうが逃がすまいがテロを防ぐことが第一だしな・・・仕方ないか・・・」


所は遍路とミツキの2人に缶コーヒーを渡した。

缶コーヒーを飲みながら、遍路は気になったことを訊く。


「・・・で、試合はどうなってる?」


「埼武が3-0でリード。今は5回ウラで、ノーアウト1塁で横浜の攻撃だ」


「そうか・・・」


所から埼武ドームで行われている試合の様子を聞けて満足したのだった。

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